
ノブです。親から実家を相続して、その流れで自分たちの終の住処を調べ始めました。
平屋を考えている人から、いちばんよく聞かれるのがこれです。
バリアフリーにすると、いくら上がるのかという話です。
先に、制度の動きを1つ。
2026年度の介護報酬の改定が決まり、2026年6月1日から適用されています。審議報告が公表されたのは2025年12月23日で、そこから半年かけて中身が固まりました。介護にまつわる制度は、こうして数年ごとに書き換わっていきます。
ところが、これから家を建てる人は、その制度の外にいます。
介護保険の住宅改修という仕組みは、要介護や要支援の認定を受けた人が、いま住んでいる家に手を入れるときのものだからです。新築の工事に、この20万円は使えません。
つまり、建てるときのバリアフリーは全額が自分のお金になります。
だからこそ、どこにいくら乗るのかを先に知っておきたいわけです^^;
僕も最初は「バリアフリー仕様で200万円」というような、まとまった数字を探していました。ところが見積書を並べてみると、そういう行はどこにもありませんでした。増えていたのは、廊下の幅が10センチ広がったぶんの床面積と、壁の中に入れた板と、建具の種類の差だったんです。
ばらばらの場所に、少しずつ乗っていました。
バリアフリーの金額は、寸法を何ミリにするかを決めた結果として出てきます。
この記事では、その寸法を1つずつ数字にして、見積書のどの行が動くのかまで書きます。段差、廊下と出入口の幅、引き戸、手すりの下地、トイレと浴室の広さ、床材、スイッチの高さ。最後に、制度の等級を取るかどうかの判断まで進めます。
なお、この記事に出す工事の金額は、僕が実際に見積書と仕様変更の一覧で見た幅を書いた目安です。会社と地域と時期で動くので、そのまま自分の家の金額にはなりません。
- 増える金額は広さと下地と建具の3つに分かれる
- 通路780ミリと出入口750ミリが制度上の線
- 壁の中の下地は今なら1か所あたり数千円
- あとから直すと解体と復旧の費用が足される
- 介護保険の住宅改修は新築には使えない
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平屋のバリアフリー費用は、どの工事に乗ってくるのか
- 増える金額は広さと壁の中の板と建具の3か所に散る
- 標準仕様に最初から入っている部分と追加になる部分がある
- 建てたあとに同じ工事をすると解体と復旧が上乗せになる
- 介護保険の住宅改修は認定を受けた人が使う仕組みになる
最初に、お金の乗り方の形を押さえます。
展示場で「バリアフリーの仕様にすると、いくら増えますか?」と聞いたことがあります。返ってきたのは、金額ではなく質問でした。どこまでやるかで全然変わります、と。当時は答えをはぐらかされたように感じたのですが、見積書を読めるようになってから、あれは正確な返事だったと分かりました^^;
バリアフリーという名前の工事は、見積書に存在しません。
だからこの章では、その金額がどの行に化けて入り込んでいるのかを、3つに分けて先に置いておきます。
増えるのは、広さと壁の中の板と建具の3つ
増額の正体は、大きく3つでした。
1つ目が、広さです。
廊下を広げる、トイレを広げる、浴室を1サイズ上げる。どれも床の面積が増えるので、坪単価がそのまま乗ってきます。3つの中で、金額がいちばん大きく動くのはここです。
2つ目が、壁の中に入れる板です。
手すりを付けられるようにするための下地で、仕上がってしまえば外からは見えません。石膏ボードだけの壁にはネジが効かないので、手すりを付ける場所には合板を仕込んでおきます。
これは安く済みます。
3つ目が、建具です。開き戸を引き戸に替える、開口の幅を広げる、ドアのノブをレバーに替える。1本ずつの差は小さいのですが、家じゅうの建具に効いてくるので、合計すると無視できない額になりました。
この3つを別々に見積もってもらうと、優先順位が付けられます。
僕がすすめているのは、広さは建てるときにしか決められないので最優先、下地は安いので全部入れる、建具は必要な場所から順に、という並べ方です。予算が足りなくなったときに、どこを削るかの判断が早くなります。
標準仕様に入っているものと、追加になるもの
ここで1つ、注意したいことがあります。
「バリアフリーにすると300万円上がる」という話を見かけますが、その数字は会社ごとの標準仕様が何かによって変わります。
出発点が違うからです。
いまの新築は、室内の床がフラットになっている会社が多くなりました。敷居の出っ張りをなくす、浴室の出入口の段差を小さくする、玄関の上がりかまちを低めにする。このあたりを標準に含めている会社なら、追加はゼロです。
一方で、手すりの下地を標準に入れている会社は多くありません。
引き戸も同じです。
同じ仕様にしたのに追加額が会社ごとに違うのは、標準の中身が違うからでした。
だから、見積書をもらうときは標準仕様書も一緒にもらいます。A4で数枚の書類で、そこに建具の種類も床の仕上げも書いてあります。追加の金額だけを見比べると、標準が薄い会社ほど高く見えてしまうので、注意が要る部分です。
僕はこの書類を3社ぶん並べて、蛍光ペンで違う行に線を引きました。
1時間ほどの作業です。
それだけで、どの会社の見積もりが同じ土俵に乗っているのかが見えてきました。
あとから直すと、解体と復旧が上乗せになる
同じ工事でも、いつやるかで金額が変わります。
新築の段階で廊下を10センチ広げるのは、図面の線を動かすだけです。かかるのは、増えた面積ぶんの材料と手間だけになります。
建てたあとだと、違います。
壁を壊して、下地を組み直して、石膏ボードを張って、クロスを張って、出た廃材を処分します。広げたい部分そのものの工事より、その前後の作業のほうが手間としては大きくなりました。
引き戸への交換も同じ形です。
新築なら建具の種類を選ぶだけなので、差額は1本あたり数万円という水準でした。あとから開き戸を引き戸に替えるとなると、壁を開けて引き込む場所を作るか、壁の外側にレールを出すかの工事になります。同じ引き戸でも、建てるときの差額と、あとからの工事費は別の数字です。
この差があるので、迷ったら先に入れます。
特に、壁の中と床の下に関わるものは、あとから触ると必ず解体が付いてきました。逆に、手すり本体や照明器具のように、表面に付けるだけのものは、あとからでも大きくは変わりません。
線引きは、そこです。
壁の中か、表面か。この2つで分けると、今やるべきものが自動的に絞れます。
介護保険の住宅改修は、新築の工事には使えない
制度の話を、正確に書いておきます。
介護保険には住宅改修費の支給という仕組みがあります。厚生労働省の資料によると、支給限度基準額は20万円で、要介護度にかかわらず同じ額です。給付は原則9割にあたる18万円までで、所得に応じて8割、7割になる場合もあります。
対象になる工事は6種類と決まっています。
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 滑りの防止と移動の円滑化のための床または通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
- これらに付帯して必要になる工事
並べてみると、この記事で扱う内容とほとんど同じです。
ただし、使える人が限られます。
要介護または要支援の認定を受けた人が、住んでいる住宅に手を入れるときの制度だからです。工事の前に市町村へ申請して、終わってから領収書を出す流れになります。これから建てる家の工事費には、この20万円は充てられません。
制度の詳しい中身は、厚生労働省の福祉用具・住宅改修のページに載っています。
この事実は、悲しい話ではありません。
認定を受けてから直せるのは、6種類の小さな工事だけです。廊下の幅も、トイレの広さも、この枠には入っていません。つまり、いちばん効く部分は最初から自分で決めておくしかない、ということになります。年を取ってからの暮らし方を平屋と2階建てで比べた話は、平屋と2階建て、老後はどっちのほうにまとめてあるので、住み方そのものから決めたい場合はそちらを先に読んでみてください。
段差をなくすと、床の高さが全部つながる
- 玄関の上がりかまちは基礎の高さと土間の仕上げで決まる
- 浴室の出入口は排水の受け方によって残る段差が変わる
- 掃き出し窓の外側は雨の入り方を見ながら高さを決める
- 建具の下に残る5ミリの出っ張りがつまずきの元になる
ここからが、寸法の話です。
最初は段差にします。手すりより先にこちらを書くのは、段差が家の骨格に近い部分だからです。基礎の高さ、床の組み方、排水の位置。どれも建てたあとには動かせません。
祖母が転んだのは、玄関でした。上がりかまちに腰を掛けて靴を履こうとして、立ち上がるときによろけたんです。入院にはなりませんでしたが、そこから外に出る回数が目に見えて減りました。
1段の高さが、生活の量を変えてしまうことがあります。
だから、家の中に残る段差を1か所ずつ数えて、それぞれ何センチなのかを決めていきます。
玄関の上がりかまちを、何センチにするか
玄関の土間と、室内の床の差です。
一般的な木造の家では、18センチ前後になることが多くなります。基礎の高さと、床を組むための厚みが積み上がった結果の数字です。
これを下げる方法は2つあります。
1つは、土間の仕上げ面を上げることです。コンクリートを厚めに打って、床との差を10センチ前後まで縮めます。もう1つは、基礎の高さそのものを見直すやり方です。ただし基礎は地面からの高さに決まりがあるので、下げられる幅は限られます。
現実的なのは、前者でした。
費用は、土間の面積ぶんのコンクリートと仕上げが増えるだけなので、数万円という水準の目安です。18センチを10センチにするだけで、腰を掛けずに上がれるようになります。
もう1つ、式台という手もあります。
土間と床の間に置く踏み板で、高さを半分に割る役目をします。18センチを9センチずつの2段にする形です。
造作で作ると数万円から十数万円、置き型なら1万円台から手に入ります。
置き型は動かせるので、必要になってから足せます。ただし、置き型は蹴飛ばすと動いてしまうので、固定できるタイプを選ぶか、造作にしておくほうが落ち着きました。
浴室の出入口の段差は、排水の受け方で変わる
次は浴室です。
いまのユニットバスは、洗い場の床が脱衣所より一段下がった形になっていて、その差が2センチから3センチという製品が中心になっています。昔の在来工法のように10センチ以上またぐ形は、新築ではほとんど見かけません。
残った数センチを、どう納めるかです。
出入口の下に細長い排水の溝を入れて、その上に格子状のふたを載せる方法があります。溝が水を受けるので、床をほぼ平らにつなげられます。
ふたの部分の見た目は、金属の格子です。
この仕様にすると、メーカーのオプションで数万円という水準でした。標準で入っている製品もあるので、まずは選んだユニットバスの仕様を確かめます。浴室の段差は、工事ではなく製品の選び方でほぼ決まりました。
それと、脱衣所側の床の高さも見ておきます。
洗面脱衣室の床に防水のシートを敷く場合、その厚みぶんだけ床が上がります。数ミリの話なのですが、浴室側との差が縮まるか広がるかに効いてきました。
図面では分かりません。
仕様が決まったところで、浴室と脱衣所の床の高さの差は最終的に何ミリになりますか、と一度聞いておくと確実です。
掃き出し窓とテラスの高さは、雨の入り方で決まる
平屋は、掃き出し窓が多くなります。
リビングも各部屋も1階にあるので、庭に出られる窓をいくつも取れるからです。ところが、この窓の下にも段差があります。
室内の床と、外のテラス。
ここをフラットにつなぐと、外に出るのが楽になります。車いすを使うことになったときの出入口にもなるので、1か所だけでも平らにしておく考え方があります。
ただし、雨との兼ね合いが出てきます。
外の高さを室内と同じにすると、強い雨のときに水が室内側へ回り込みやすくなるからです。だから、窓のすぐ外に排水の溝を入れるか、デッキを少し下げて置いて、そこから緩やかにつなぐ形にします。
ウッドデッキなら、数十万円という水準の目安でした。
外に出る窓は、1か所だけ平らにつないでおけば足ります。
庇を深く出しておくと、窓まわりに吹き込む雨そのものが減ります。平屋は屋根が低い位置にあるぶん、庇を出しやすい形です。この点は、平屋のほうが有利に働きました。
建具の下に残る5ミリが、つまずきの元になる
最後は、室内の小さな段差です。
引き戸には、床にレールを埋め込むタイプがあります。V字の溝が床に残る形で、戸車がそこを走ります。
溝の深さは、数ミリです。
数ミリなら問題ないように思えるのですが、スリッパの先が引っかかることがあります。掃除のときにゴミが溜まる場所にもなりました。
上から吊るタイプなら、床に何も残りません。
建具の上に取り付けたレールに戸をぶら下げる方式で、床は完全に平らなままです。掃除機がそのまま通ります。床に何も出ていない状態は、年を取ってからも掃除を続けられる形でもありました。
差額は、1本あたり1万円から3万円という目安です。
家じゅうの引き戸を上吊りにすると、それなりの額になります。だから僕は、よく通る場所から順に決める形をすすめています。玄関からリビング、リビングから廊下、廊下からトイレ。この3か所を押さえるだけでも、日常の移動はほとんどカバーできました。
廊下と出入口の幅は780ミリと750ミリが分かれ目
- 国の基準に書かれている数字は通路と出入口で別になる
- 柱の出っ張りがあると実際に通れる幅はそこだけ狭まる
- 車いすを見込む場合は基準の数字では足りなくなる
- 幅を広げると増える面積は掛け算ですぐ計算できる
- 上の等級になるほど寸法以外の条件も増えていく
この章が、記事の中心です。
幅は、建てたあとにいちばん動かしにくい寸法でした。段差は後から削れることがありますし、手すりは付けられます。ところが、廊下の幅を10センチ広げるには、両側の壁のどちらかを動かすしかありません。
知人が家を建てたあと、お父さんが車いすを使うことになりました。廊下は通れたそうです。ただ、トイレの入口で止まりました。入口の幅が足りず、手前で車いすを降りて、壁を伝って入ることになったと聞きました。
数センチの話です。
だから、国が基準として示している数字を先に置いて、そこから自分の家をどうするかを決めていきます。
基準にある数字は、通路780ミリと出入口750ミリ
住宅性能表示制度に、高齢者等配慮対策等級という項目があります。
国土交通省が定めた評価方法基準の中で、等級ごとに満たすべき寸法が決められています。そのうち等級3の基準にはこう書かれています。
- 日常生活空間内の通路の有効な幅員が780ミリ以上(柱等の箇所は750ミリ以上)
- 日常生活空間内の出入口の幅員が750ミリ以上(浴室の出入口は600ミリ以上)
日常生活空間というのは、毎日の暮らしで使う範囲のことです。
寝室、トイレ、浴室、洗面、食事をする場所、玄関、それらをつなぐ通路。この範囲が対象になります。
780ミリと750ミリ。この2つが、制度の上での出発点でした。
木造の家は、柱と柱の間隔が910ミリで組まれることが多くなります。そこから壁の厚みを引くと、通れる幅はちょうど780ミリ前後に落ち着きます。ふつうに建てれば、等級3の寸法はおおむね満たせる関係になっていました。
制度の中身は、国土交通省の住宅の品質確保の促進等に関する法律のページから、評価方法基準の告示までたどれます。
ここで大事なのは、780という数字の位置づけです。
これは「ここまであれば杖を使う人や介助する人が通れる」という線であって、車いすで生活する前提の数字ではありませんでした。次の見出しから、その差を埋めていきます。
柱の出っ張りで、実際に通れる幅は数センチ減る
有効な幅員という言葉が出てきました。
これは、実際に体が通れる幅のことです。壁の仕上げ面から、向かい側の仕上げ面まで。図面に書いてある芯から芯までの寸法とは、別の数字になります。
差は、だいたい10センチ前後です。
そして、廊下の途中に柱が出ている場所があると、そこだけさらに数センチ狭くなります。基準に「柱等の箇所は750ミリ以上」という例外が書かれているのは、そのためでした。
この出っ張りは、図面では見落としやすい部分です。
平面図では、柱は小さな四角で描かれるだけだからです。壁の中に隠れる柱と、廊下側に出てくる柱が、同じ記号で描かれていることもありました。廊下でいちばん狭い場所が何ミリになるのかを、図面に書き込んでもらいます。
聞き方は決まっています。
この廊下の有効幅員は、いちばん狭いところで何ミリになりますか、と一言です。
答えが790ミリなのか、820ミリなのかで、そのあとの相談が具体的になります。数字で返ってこない場合は、図面に寸法線を入れてもらえば済む話でした。
車いすを見込むなら、780ミリでは足りない
ここが、いちばん判断の分かれる場所です。
手動の車いすは、幅が630ミリから700ミリという製品が中心になります。数字だけ見れば、780ミリの廊下を通れます。
ただし、まっすぐ進む場合だけです。
実際には、手が車輪の外側に出ます。壁に指をこすらないように走らせるには、左右に数センチずつの余裕が要りました。さらに、廊下から部屋へ直角に曲がる場面では、前輪を振るための幅が別に必要になります。
目安として言われているのは、通路が850ミリから900ミリ、出入口が800ミリ前後という数字でした。
直角に曲がる場所では、もう少しほしくなります。
その場合、曲がり角の手前だけ壁を斜めに切るか、そこだけ幅を広げる形にします。全部の廊下を900ミリにしなくても、曲がる場所だけ手を打てば通れることが多くなりました。
とはいえ、全員が車いすを使うわけではありません。
僕が現実的だと思っているのは、家の中に1本だけ広い動線を作っておくやり方です。玄関から寝室、寝室からトイレ。この線だけを850ミリ以上にしておけば、残りの廊下は780ミリのままでも暮らしが成り立ちます。
幅を10センチ広げると、延床は何坪増えるのか
では、金額です。
廊下の長さが10メートルの平屋で考えます。幅を10センチ広げると、増える床面積は10メートル×0.1メートルで1平方メートル。坪に直すと約0.3坪です。
坪単価80万円なら、24万円。
思ったより安い、と感じた人が多いのではないでしょうか?
実際、幅の変更は面積の増加としては小さいほうです。ところが平屋では、この計算に続きがあります。廊下が広がったぶん、建物全体が横に伸びるからです。2階建てなら上に逃がせる面積が、平屋では全部そのまま地面を使います。
外周が伸びれば、基礎と屋根と外壁も増えます。
そして、敷地にも効きます。
建ぺい率が60パーセントの土地なら、建物が1坪増えるたびに敷地は1.7坪ほど余分に要る計算になりました。土地から買う場合、ここが金額として乗ってきます。土地の単価が坪30万円なら、1坪あたり50万円ほどの差です。
だから、全部の廊下を広げるのは効率がよくありません。
1本の動線だけを広げるという先ほどの考え方は、この計算から出てきています。10メートルのうち4メートルだけを広げるなら、増える面積は0.12坪、10万円ほどの目安でした。
上の等級になるほど、寸法以外の条件も増える
等級3の数字を見てきました。
この項目には、もっと上の段階があります。等級4と等級5です。
上に行くほど、求められる寸法は広くなります。
それに加えて、手すりを付ける場所、床の段差の扱い、階段の形、浴室やトイレの広さについても条件が増えていきます。平屋には階段がないので、そこの条件は関係ありません。
ただし、数値の細かい部分は告示で決まっていて、読み解くには慣れが要ります。
だから、等級で話すのではなく寸法で話すのが早い、というのが僕の結論です。等級4を取りたいと伝えるより、この廊下を850ミリにしてくださいと伝えるほうが、図面にそのまま反映されました。
等級として証明が要るかどうかは、別の判断です。
その話は、この記事の最後の章でまとめます。

開き戸を引き戸に替えると、1本いくら動くのか
- 扉の種類を替えたときの差額は1本ずつ見積書に出てくる
- 壁の中へ引き込む形にするなら配線の位置を先に決める
- 取っ手の形を替えるだけなら金額はほとんど動かない
- 呼び寸法と実際に通れる開口は同じ数字にならない
幅の次は、扉です。
開き戸は、開けるときに体を後ろに引く動きが要ります。杖を使っていると、この一歩が難しくなります。車いすなら、扉の手前で前後に動いてから通ることになりました。
引き戸なら、横に滑らせるだけです。
体の位置を変えずに開けられて、開けたまま置いておけます。介助する人が一緒に通る場面でも、扉が邪魔になりません。この章では、その引き戸にいくらかかるのかを1本ずつ数えます。
扉の種類を替えると、差額は1本いくらか
新築の段階で選ぶ場合の話です。
同じメーカーの同じシリーズで、開き戸を引き戸に変更すると、差額は1本あたり2万円から5万円という水準の目安でした。上から吊るタイプにすると、そこからさらに1万円から3万円ほど乗ります。
引き戸のほうが高くなる理由は、部材の数です。
開き戸は、枠と扉と丁番で成立します。引き戸はそこにレールと戸車、引き残しを受ける部分、開けたときに戸が収まる場所の枠が加わります。
部品が増えるぶんの差、と考えると納得できます。
平屋で建具が10本あるとして、そのうち5本を引き戸にすると、10万円から25万円という幅になりました。家全体の金額から見れば、大きな割合ではありません。
ただし、全部を引き戸にするのはすすめていません。
引き戸は、開けたときに戸が横の壁を占領します。その壁には家具も棚も置けなくなりますし、スイッチも付けられません。平屋は壁の量が限られるので、この制約が効いてきました。
壁の中へ引き込むなら、配線の位置を先に決める
引き戸には、2つの収まり方があります。
1つは、壁の表面に沿って滑らせる形。もう1つは、壁の中に引き込んでしまう形です。後者は引き込み戸とか戸袋付きと呼ばれます。
見た目は、後者のほうがすっきりします。
開けきると扉が完全に見えなくなるので、開口がそのまま通路になります。引き込みにすると、開口の幅をいちばん広く取れます。
費用は、1本あたり3万円から8万円ほど上乗せという目安でした。
そのかわり、制約が出ます。
戸が入る場所の壁は、中が空っぽでなければなりません。つまり、そこに柱も筋交いも配線も通せなくなります。スイッチやコンセントの位置も、戸袋を避けて決めることになりました。
設計の早い段階で決める話です。
途中から「やっぱり引き込みに」と言うと、電気の図面を引き直すことになります。建具の種類は、間取りが固まる前に一覧で決めてしまうのが楽でした。
取っ手の形を替えるだけなら、金額はほとんど動かない
安い割に効くものも書いておきます。
扉の取っ手です。
丸いノブは、握って回す動きが要ります。手に力が入りにくくなると、この動作が難しくなりました。レバー型なら、押し下げるだけです。手のひらでも、肘でも開けられます。
いまの新築は、レバー型が標準になっている会社がほとんどです。
差額が出るとしても、1か所あたり数千円という水準でした。
引き戸の取っ手も同じです。指を入れてつまむ形より、手を掛けて押し引きできる棒状のほうが力が要りません。こちらも数千円の差です。
鍵の形も一緒に見ておきます。
トイレと浴室の鍵は、中から回して掛けて、外から硬貨やドライバーで開けられる形が一般的です。中で具合が悪くなった人を外から助ける場面では、この外から開けられる仕組みが要ります。非常時に解錠できるかどうかは、建具の仕様書に書いてありました。
開けられない部屋を作らない、という1点だけは確かめておきます。
それと、水栓のレバーも同じ考え方で選べます。
洗面もキッチンも、いまは上げ下げのレバー式が標準なので、あらためて追加する必要はほとんどありません。標準仕様書で形を確かめておけば足ります。
呼び寸法と、実際に通れる開口は別の数字
この章でいちばん落とし穴になる部分です。
建具には呼び寸法があります。カタログに書かれている枠の外側の寸法で、780とか800という数字で表されます。
ところが、通れる幅はそれより狭くなります。
枠の見込みぶん、引き戸なら開けきったときに残る戸の端のぶん。これらを引いた残りが、実際に体が通る幅でした。呼び寸法が780の建具で、有効開口が730ミリほどになることもあります。
50ミリの差です。
先ほど書いた基準の750ミリは、この有効開口で数えます。カタログの数字をそのまま基準に当てはめると、足りていないのに足りていると読んでしまいます。
だから、確かめ方を決めておきます。
この建具の有効開口は何ミリですか、と聞く形です。メーカーの仕様書には必ず書いてあるので、その数字を図面に書き込んでもらいます。トイレと浴室と寝室の3か所だけでも、押さえておくと安心でした。
同じ条件を伝えても、会社によって入れてくる建具の種類は変わります。
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届くのは、わが家のために描かれた平屋の計画書
住宅展示場でもらうカタログは、誰にでも同じ1冊です。平屋住宅特集で届くのは、あなたの希望から作られた、あなたの家のための資料です。
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- 間取りプラン(家族の人数と暮らし方に合わせた平屋の図面)
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同じ条件で複数の会社から届くので、並べたとたんに各社の得意なところが見えてきます。
提携している住宅会社は1,280社以上です(タウンライフ家づくり公式サイト、2026年9月現在・同社調べ)。
手すりの下地と水回りに要る畳数
- 壁の中に板を入れておく工事は今なら数千円で済む
- 便器の横と前にどれだけ空くかで介助の入り方が変わる
- 浴室のサイズ表記は内側の寸法を並べた数字になる
- 洗面と脱衣を分けると使う人が重なっても回る
ここからは、点で効く工事です。
手すりの下地は、金額としては家全体の中でいちばん小さい部類に入ります。それでいて、入れ忘れると、あとから壁を壊すことになる部分でもありました。
父の家で、トイレに手すりを付けようとしたことがあります。壁を叩いて、ネジが効く場所を探しました。結局、見つかったのは便器から離れた1か所だけで、そこに付けても意味のない位置でした^^;
下地は、目に見えません。
だから、図面の段階で場所を指定しておくしかありません。この章では、その位置と、水回りの広さをセットで決めていきます。
壁の中に板を入れておく工事は、1か所いくらか
手すりの下地の話です。
石膏ボードの壁は、ネジが効きません。ボードアンカーという部品を使えば軽いものは留められますが、体重を預ける手すりには不十分でした。だから、ボードの裏に合板を仕込んでおきます。
厚さは12ミリ前後、幅は30センチほど。
材料そのものは、ホームセンターで買える板です。
新築時に入れる場合の費用は、1か所あたり3,000円から1万円という水準の目安でした。壁1面をまるごと下地にしても、2万円前後に収まることが多くなります。
安いので、全部入れます。
僕がすすめている場所は7か所です。玄関の上がりかまちの横、廊下の両側、トイレの便器の横と前、浴室の出入口と浴槽の横、洗面台の横、寝室のベッドの横、そして掃き出し窓の横。全部入れても、数万円で終わります。
あとから同じことをすると、話が変わります。
壁紙をはがして、ボードを切って、板を入れて、ボードを戻して、また壁紙を張ります。1か所で数万円から十数万円という目安になりました。しかも壁紙は同じ柄が廃番になっていることがあるので、その面だけ張り替えになる場合もあります。
手すり本体は、あとでかまいません。
1本1万円前後で、取り付けも短時間で終わります。要るようになってから、必要な高さに合わせて付けるほうが体に合いました。
便器の横と前に、どれだけ空けておくか
トイレの広さです。
一般的な新築のトイレは、内寸で幅780ミリ、奥行き1,650ミリというあたりに落ち着きます。畳でいうと1畳、坪でいうと0.5坪です。
1人で使うぶんには、これで足ります。
介助が入る場面を考えると、狭くなります。横に人が立つ場所がないからです。便器に座る人を支えるには、横か斜め前に立てる空間が要りました。
幅を1,365ミリにすると、1.5畳です。
増える面積は0.25坪ほどで、坪単価80万円なら20万円という目安でした。
この20万円で、便器の横に人が1人立てるようになります。手すりを付けるにしても、立ち上がりを支えるにしても、この横のスペースが効きました。平屋は上下の移動がないぶん、トイレの位置を寝室のすぐ近くに置けるので、広さと距離の両方を取りやすい形です。
奥行きも見ておきます。
タンクのない便器にすると、同じ奥行きでも前に20センチほど余裕が生まれます。面積を増やさずに使える広さを稼ぐなら、便器の種類を変えるほうが先でした。
浴室のサイズ表記は、内側の寸法を並べた数字
浴室のカタログには、1616とか1620という数字が並びます。
これは内側の寸法をセンチの上2桁で並べたもので、1616なら1,600ミリ×1,600ミリ、1620なら1,600ミリ×2,000ミリという意味です。
戸建ての標準は、1616が多くなります。
1坪サイズと呼ばれる大きさです。
これを1620に上げると、洗い場が奥行き方向に40センチ広がります。介助する人が横に立って、体を支えながら洗える幅になりました。増える面積は0.24坪ほどで、製品の差額と合わせて20万円から40万円という水準の目安です。
浴槽のまたぎの高さも見ます。
洗い場の床から浴槽の縁までが、40センチ前後という製品が中心です。これを低くしたタイプもありますが、低くすると今度は浴槽から立ち上がりにくくなります。だから高さより、縁に腰を掛けて足を回して入れる幅があるかどうかで選ぶほうが現実的でした。
いま住んでいる家の浴室を直す場合の金額は、別の考え方になります。既存の浴室を壊して入れ替える工事の費用は、お風呂リフォームの費用相場のほうに、50万円と150万円で何が変わるのかという形でまとまっています。
洗面と脱衣を分けると、使う人が重なっても回る
最後は、洗面脱衣室です。
多くの家では、洗面台と着替える場所が同じ部屋になっています。2畳ほどの空間に、洗面台と洗濯機と、脱いだ服を置く場所が詰まっている形です。
ここを2つに割る考え方があります。
洗面台を廊下側に出して、脱衣する場所だけを浴室の手前に残します。こうすると、誰かが入浴している間も洗面台が使えました。
介助が入る場面では、この分け方が効きます。
浴室の手前に介助する人が立てる広さを確保しながら、洗面台の前を通路として使えるからです。増える面積は1畳ほど、0.5坪で40万円という目安になりました。
それと、脱衣所の温度も見ておきます。
浴室との温度の差が大きいと、体への負担が増えます。暖房を入れられる小さな機器を天井か壁に付けておくと、この差が縮まりました。本体と工事で、5万円から15万円という水準です。
平屋は、天井の上がすぐ屋根裏です。
そのぶん、換気や暖房の機器を後から追加するときの配管が通しやすい形でもありました。
床の滑りと、夜の明かりと、押しやすいスイッチ
- 床の仕上げを滑りにくいものに替える差額は小さめになる
- 夜中の移動で要るのは天井の照明ではなく足元の光になる
- 壁に付ける器具の高さは立った姿勢のまま決めてしまう
- 玄関のスロープは高さの12倍の長さが要る計算になる
ここまでは、骨格に関わる話でした。
この章は、表面の仕上げと電気の話です。どれも金額としては小さく、あとからでも手を入れられるものが混ざっています。それでも、建てるときに決めておくと安く済む部分があります。
母が言っていたことがあります。夜中にトイレへ行くとき、電気を点けると目が覚めてしまって、そのあと寝付けなくなる、と。それで手探りで歩いていたそうです。
明かりの付け方1つで、暮らしの質が変わります。
だからこの章では、滑り、明かり、器具の高さ、そして玄関の外まで順に見ます。
床の仕上げを替えると、どれくらい違うのか
床材の話です。
一般的な複合フローリングは、表面に硬い塗装がかかっています。水がかかると滑りやすくなる面があり、靴下で歩くと足が流れることがありました。
滑りにくい仕上げの製品もあります。
表面に細かい凹凸を付けたタイプや、水回り向けの床材です。差額は、1平方メートルあたり数百円から2,000円ほどという目安でした。
30坪の家の全面で、10万円から20万円という計算になります。
ただし、全面を替える必要はありません。
滑って困るのは、水がかかる場所だからです。洗面脱衣室、トイレ、キッチンの足元、玄関ホール。この4か所だけに絞れば、数万円で収まりました。
玄関の土間も見ておきます。
つるつるしたタイルは、雨の日に水が乗ると足が滑ります。ざらついた表面のタイルや、屋外用の製品を選ぶと、この心配が減りました。こちらも差額は小さく、1万円から3万円という水準の目安です。
夜中に要るのは、天井の照明ではなく足元の光
照明の話です。
夜中に起きたとき、天井の照明を点けると部屋全体が明るくなります。目が慣れるまで時間がかかりますし、同じ部屋で寝ている人も起こしてしまいます。
足元だけ照らす器具があります。
フットライトと呼ばれる小さな照明で、壁の下のほうに埋め込む形です。人が近づくと点いて、離れると消えるタイプが使いやすい形でした。
1か所あたり、本体と工事で1万円前後という目安です。
置く場所は3か所あれば足ります。寝室の出入口、廊下の中ほど、トイレの前。この3か所で、夜中の移動が全部つながります。
3万円で、夜の歩き方が変わりました。
コンセントに差し込むタイプもあります。
こちらは数千円で、あとからでも置けます。ただし床に近い位置のコンセントが要るので、寝室と廊下の足元にコンセントを付けておくと選択肢が残りました。
それと、停電のときに点くタイプもあります。
平屋は屋根から光が入りやすい形なので、昼間は困りません。効いてくるのは夜です。非常時に廊下だけでも見えると、家の中の移動が続けられました。
壁に付ける器具の高さは、立った姿勢のまま決める
スイッチとコンセントの位置です。
スイッチの標準的な高さは、床から1,200ミリ前後になります。大人が立って手を伸ばしたときに、ちょうどいい位置です。
これを1,000ミリから1,100ミリに下げます。
座った姿勢からでも手が届く高さになり、子どもも押せるようになりました。立っている人にとっても、少し低いだけで不便はありません。
コンセントは逆で、上げます。
標準は床から250ミリ前後ですが、これを400ミリにすると、かがまずに抜き差しできます。掃除機を使うときにも楽でした。
費用は、ほとんど変わりません。
同じ部材を、違う高さに付けるだけだからです。電気の図面を書く段階で指定しておけば、追加費用なしで対応してもらえることがほとんどでした。お金がかからないのに効く変更は、ここがいちばん分かりやすい例です。
スイッチの大きさも選べます。
指1本で押す小さなものより、手のひらで押せる大きな面のほうが確実です。こちらも1か所あたり数百円から1,000円ほどの差で、家じゅうを替えても1万円前後の目安でした。
玄関のスロープは、高さの12倍の長さが要る
最後に、玄関の外です。
道路から玄関までに、階段が何段かある家があります。平屋でも、敷地に高低差があれば同じです。
ここをスロープにする場合の計算があります。
車いすで自力で上がれる傾きは、12分の1が目安とされています。高さ1に対して、長さが12要るという意味です。
高さが45センチなら、必要な長さは5.4メートルになります。
途中で折り返すなら、方向を変えるための平らな部分も要ります。全部で6メートル以上の長さを敷地の中に取ることになりました。
平屋は、ここで不利になります。
建物が横に広がるぶん、庭や通路に使える余白が少なくなるからです。だから、スロープを見込むなら土地探しの段階から考えることになりました。
現実的な代わりの手は、2つあります。
1つは、段差を小さく割ること。1段18センチの階段を、1段12センチの3段に割り直すと、上りやすくなります。もう1つは、段差解消機という昇降する機械を置く方法です。本体と工事で数十万円から100万円を超える水準になるので、必要になってから検討する形が現実的でした。
いま決めておくのは、置ける場所を空けておくことだけです。
等級を取るかどうかで、見積書の出方が変わる
- 性能表示の10分野のうち必須になっているのは4分野だけ
- 長期優良住宅の認定では戸建てに求められない項目がある
- 評価を受けるなら工事費とは別に審査の手数料がかかる
- 同じ寸法表を渡すと増えた分だけを並べて比べられる
最後の章は、制度との付き合い方です。
ここまで寸法の話をしてきましたが、「その寸法で建てました」という証明が要るかどうかは、別の問題になります。売るときや、補助の制度を使うときに、書類として効いてくる場面があるからです。
僕は最初、性能の等級を全部高くすれば安心だと思っていました。ところが調べていくと、項目ごとに必須と選択が分かれていて、取らなくても建てられるものが多いと分かりました。
取るか取らないかは、選べます。
だからこの章で、その判断の材料を置いて記事を閉じます。
性能表示の10分野のうち、必須は4分野だけ
住宅性能表示制度の話です。
この制度では、家の性能を10の分野に分けて表示します。構造の安定、火災時の安全、劣化の軽減、維持管理と更新への配慮、温熱環境とエネルギー消費量、空気環境、光と視環境、音環境、高齢者等への配慮、防犯。この10分野です。
このうち、新築で必須になっているのは4分野でした。
構造の安定、劣化の軽減、維持管理と更新への配慮、温熱環境とエネルギー消費量。この4つです。
高齢者等への配慮は、選択項目に入っています。
つまり、評価を受けようと自分で選ばない限り、この項目は書類に出てきません。等級が付いていないのは性能が足りないからではなく、そもそも測っていないからでした。
この仕組みを知らずに、等級の表を見て焦る必要はありません。
実際の寸法が基準を満たしているかどうかと、書類として等級が付いているかどうかは、別の話です。まず寸法を決めて、そのあとで証明が要るかを考える順番でした。
長期優良住宅では、戸建てに求められない項目がある
もう1つ、混同しやすい制度があります。
長期優良住宅です。
こちらは、長く使える家として認定を受ける仕組みで、劣化対策、耐震性、維持管理と更新の容易性、省エネルギー性能などの基準が並びます。税や金利の面で優遇を受けられるので、名前を聞いたことのある人は多いはずです。
この認定基準の中に、バリアフリー性という項目があります。
ただし、対象が限られます。
国土交通省の資料によると、この項目が求められるのは共同住宅等で、基準になるのは共用部分の高齢者等配慮対策等級でした。一戸建ての住宅には、この項目が課されません。可変性という項目も同じ扱いです。
だから、平屋で長期優良住宅の認定を取っても、バリアフリーの中身は証明されません。
制度の詳細は、国土交通省の長期優良住宅のページで確かめられます。
長期優良住宅だからバリアフリーだ、という読み方はできませんでした。
2つの制度は、目的が違います。
長く保つための性能と、暮らしやすさの寸法。どちらも必要ですが、書類の上では別々に扱われていました。
評価を受けるなら、工事費とは別に手数料がかかる
等級として証明を取る場合の費用です。
住宅性能評価を受けるには、登録された評価機関に申請します。設計の段階で図面を見てもらう評価と、工事中に現場を見てもらう評価の2段階です。
工事費とは別に、手数料が出ます。
金額は機関と住宅の規模で変わるので、ここで一律の数字は書きません。申し込む予定の機関の料金表を見るのが確実です。評価を受ける分野を増やすと、そのぶん手数料も上がる仕組みになっています。
そして、寸法を基準に合わせるための工事費も乗ります。
この2つを足した額に見合うかどうかで判断します。
僕の考えでは、評価を取る意味が出てくるのは、将来その家を売るか貸す可能性がある場合でした。書類があれば、性能を言葉ではなく等級で説明できるからです。住み続ける前提なら、寸法さえ満たしていれば暮らしは変わりません。
ここは、予算との相談になります。
手数料に回すお金を、廊下の幅と水回りの広さに使うという選び方も成立しました。
同じ寸法表を渡して、増えた分だけを並べる
最後に、比べ方です。
ここまでで決めてきた数字を、1枚の紙にまとめます。
玄関の上がりかまちを何センチにするか、日常の動線の通路を何ミリにするか、トイレと浴室の出入口の有効開口を何ミリにするか、手すりの下地を入れる場所、トイレの幅、浴室のサイズ、スイッチとコンセントの高さ。この7項目です。
A4で1枚に収まります。
この紙を、同じ内容で3社に渡します。
すると、返ってくる見積書が比べられる形になりました。標準で入っている会社は差額ゼロ、追加になる会社はその行が立ちます。増えた分だけを横に並べると、標準の厚みの違いがそのまま見えてきます。
口頭で伝えると、ここがぶれます。
紙1枚です。
坪単価や総額そのものの見方は、平屋の費用相場のほうに、3つの箱に分けて数える形で書いてあります。寸法の追加分を足す前の土台として、先に読んでおくと数字がつながります。
そして、その3社の提案を見比べるときに効いてくるのが、標準仕様書でした。
同じ寸法を伝えても、標準に含める範囲は会社ごとに違うので、追加額の出方まで含めて比べられます。
まとめ:寸法を先に決めれば、増える金額は読める
平屋をバリアフリーにするといくら上がるのか、という問いには、ひとまとめの答えがありませんでした。見積書に「バリアフリー工事」という行が立つことはなく、増えていたのは廊下が10センチ広がったぶんの床面積であり、壁の中に仕込んだ合板であり、開き戸を引き戸に替えたときの1本ずつの差額です。国土交通省の評価方法基準では、高齢者等配慮対策等級3の線として通路の有効な幅員780ミリ以上、出入口の幅員750ミリ以上という数字が示されています。木造の家をふつうに建てると、この寸法にはおおむね届きます。車いすを見込むなら850ミリから900ミリという別の目安が要る、というのが本当の分かれ目でした。
そして、あとから直せる範囲は思ったより狭いものでした。介護保険の住宅改修は、要介護や要支援の認定を受けた人が住んでいる家に手を入れるための制度で、支給限度基準額は20万円、対象は手すりの取付けや段差の解消など6種類に限られます。廊下の幅もトイレの広さも、この枠には入っていません。父の家でトイレに手すりを付けようとして、ネジの効く場所が1か所も見つからなかったときのことを、いまも覚えています。壁の中に板を入れておく工事は、建てるときなら1か所3,000円から1万円ほどの目安でした。その数千円を惜しんだせいで、あとから壁紙ごと張り替えることになるわけです^^;
まずは、いまの住まいの廊下の幅を測ってみてください。780ミリなのか、850ミリなのか。そこから、次の家の寸法が決まり始めます。
- 増える金額は広さと下地と建具の3つに分かれる
- 等級3の線は通路780ミリと出入口750ミリ
- カタログの呼び寸法と有効開口は同じ数字ではない
- 車いすを見込むなら850ミリから900ミリが目安
- 手すりの下地は新築なら1か所数千円で入る
- トイレを1.5畳にすると横に人が1人立てる
- スイッチの高さの変更は追加費用がほぼ出ない
- 介護保険の住宅改修は新築の工事に使えない
- 長期優良住宅に戸建てのバリアフリー性は入らない
- 同じ寸法表を3社に渡すと増額分だけを比べられる
全国の会社の中から、希望の寸法で組んだ提案を無料で取り寄せられるので、一社だけで決めなくて大丈夫です。
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平屋の家づくりでいちばん心がはずむのは、自分たちの暮らしが図面の上に描かれた瞬間です。
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費用はかかりません。依頼する会社は自分で選べます。

