
ノブです。築20年台の戸建てに住んでいます。
終の住処を1階建てにするか、2年かけて調べました。その途中で、同じくらいの収入で検討している方の相談に何度か乗りました。
この帯でよく出てくるのが、2人の収入をどう扱うかという話です。合算すれば借りられる額は増えます。ただ、その分だけ将来の縛りも増えます。
数字の話をします。住宅金融支援機構の2025年度フラット35利用者調査では、注文住宅の平均所要資金が4,262万円、土地付注文住宅が5,313万円でした。前年度より上がっています。
建設物価調査会の建築費指数でも、2026年3月時点の木造住宅は前年同月比でプラス5.9%でした。同じ広さでも、去年より必要な金額が動いています。
だからこそ、2人の収入をどう組み込むかの判断が効いてきます。この記事は、その組み方の話です。
相談に乗った方の1人は、夫婦それぞれで借りる形を検討していました。そうすれば借りられる額が増えるからです。
ただ、10年後に奥さんが働き方を変える可能性があると聞いて、そこで話が止まりました。増える額と、10年後の身動きの取りにくさ。この2つを並べたとき、答えが変わったんです。
- 2人の収入で組む形にはいくつかの種類がある
- 片方の収入が減った場合の試算を先にしておく
- 子どもの進学の時期と返済の山が重なることがある
- 手元に残す現金を決めてから借入の額を出す
- 建物にかける額は性能から先に決めていく
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平屋を年収500万で建てるときの見取り図
- 1人の収入で組むか2人で組むかで枠が変わってくる
- 手取りに直してから割合で置くと現実に近づく
- 敷地を持っているかどうかで話が大きく変わる
- 紙1枚に数字を並べるところから準備を始める
この帯の収入では、選択肢が少し広がります。1人の収入だけで組むことも、2人の収入を使うこともできるからです。
相談に乗った方は、最初から2人で組むつもりでいました。そのほうが選べる家が広がるからです。ただ、話を聞いていくうちに、それが最善とは限らないことが見えてきました。
選択肢が広がるということは、選ぶ責任も増えるということでした。この章では、その見取り図を書きます。
1人の収入で組むか2人で組むかで、枠が変わってくる
1人の収入だけで組む場合、借りられる額はその収入に応じて決まります。2人の収入を合わせれば、当然ながら額は増えます。
増える額は、もう1人の収入によりますが、数百万円から1,000万円を超えることもあります。
この差は、選べる家をかなり変えます。敷地の条件も、建物の仕様も広がります。
ただし、2人で組むと2人の収入が前提になります。片方が働き方を変えると、その前提が崩れます。
だから、まず1人の収入だけで組んだ場合の枠を出します。そこから、2人で組んだ場合の枠も出します。
2つの枠を並べてから、どちらで進めるかを決めます。
相談に乗った方の場合、1人だと2,400万円、2人だと3,300万円という差がありました。
900万円の差です。この差をどう見るかが、判断の分かれ目でした。
900万円あれば、敷地の条件も建物の仕様も変わります。
ただ、その900万円は10年後の身動きと引き換えになります。
並べてみないと、この判断はできませんでした。
手取りに直してから割合で置くと、現実に近づく
年収の額面と、実際に振り込まれる額は違います。税と社会保険料が引かれるので、手取りは額面の7割から8割になります。
2人の収入で組む場合、それぞれの手取りを足します。
その合計の2割前後が、無理のない毎月の目安としてよく語られる水準です。
手取りの合計が月35万円なら、7万円前後ということになります。
今の家賃と比べるときは、管理費や駐車場代も足して比べます。持ち家になると毎年の税と手入れの積み立てが加わるからです。
賞与がある場合は、年間の合計を12で割って足します。
ただ、賞与を返済に組み込むかどうかは慎重に考えます。勤め先の状況で変わるからです。
相談に乗った方は、賞与を組み込まない形にしました。
そのぶん枠は小さくなりましたが、確実な数字だけで組めます。
確実な数字だけで組んでおくと、あとから効いてきます。
実際、3年目に賞与が減った年があったそうです。
敷地を持っているかどうかで、話が大きく変わる
この帯の収入でも、敷地の有無は決定的です。
住宅金融支援機構の調査では、注文住宅の平均所要資金が4,262万円、土地付注文住宅が5,313万円でした。差は1,051万円です。
この1,051万円が、そのまま建物にかけられる金額の差になります。
敷地を持っているなら、その分を建物に回せます。持っていないなら、そこから買うことになります。
1階建ては、同じ延床でも広い敷地が必要になります。延床30坪なら、敷地は60坪から80坪あるとゆとりが出ます。
2階建てなら40坪台でも同じ延床が置けるので、この差は敷地の価格にそのまま効いてきます。
坪単価20万円の地域なら、20坪の差で400万円です。
だから、1階建てを選ぶ場合は敷地の予算も見直します。
相談に乗った方は、敷地から探していました。
そこで、地域を1駅ぶん広げる判断をしました。
坪単価が下がったぶん、建物に回せる額が増えました。
紙1枚に数字を並べるところから、準備を始める
準備は、紙1枚で足ります。書くのは4つの数字だけです。
今の家賃と管理費の合計、毎月払える上限、手元に残しておきたい現金、今ある貯蓄。
2人で組む場合は、それぞれの手取りも書いておきます。
手元に残す現金は、生活費の半年分を目安にします。月の支出が30万円なら180万円です。
これは家を建てるかどうかに関係なく、持っておきたい額です。
貯蓄からこの残す分を引いた額が、自己資金として使える金額になります。
4つの数字が並んだら、そこから総額の枠が出ます。この計算に10分もかかりません。
紙は、2人で一緒に作ります。1人で作って見せると、賛成か反対かの話になります。
一緒に作れば、決めるのも2人になります。
2人で決めた数字なら、あとで揺れません。
この差は、実際にやってみて分かる部分でした。
2人の収入で組むときに気をつけること
- 組み方には主に3つの形があり性質がそれぞれ違う
- それぞれで借りる形は手続きの費用が2倍になる
- 片方の収入が減った場合の試算を先にしておく
- 納める額が減る仕組みの扱いも形によって変わる
- 働き方が変わる可能性を10年先まで話しておく
2人の収入を使う場合、組み方にいくつかの形があります。この違いを知らないまま進めると、あとで身動きが取れなくなることがあります。
相談に乗った方は、それぞれで借りる形が有利だと聞いていました。たしかに、納める額が減る仕組みを2人とも使えるという利点があります。
ただ、10年後の可能性を話し始めたら、答えが変わりました。この章では、その3つの形を整理します。
組み方には主に3つの形があり、性質がそれぞれ違う
ひとつ目は、1人だけが借りる形です。もう1人の収入は計算に入れません。
借りられる額は小さくなりますが、片方が働き方を変えても影響が小さくて済みます。
ふたつ目は、2人の収入を合わせて1人が借りる形です。もう1人は保証する立場になります。
借りられる額は増えますが、納める額が減る仕組みは借りた1人だけが使う形になります。
みっつ目は、2人がそれぞれ借りる形です。2本の契約になります。
借りられる額がいちばん大きくなり、納める額が減る仕組みも2人とも使えます。
そのかわり、手続きの費用が2倍になります。
それから、どちらかが働き方を変えたときに、その人の分の返済が残ります。
だから、3つを並べて比べます。借りられる額、費用、将来の身動き。この3つの軸です。
相談に乗った方は、この表を作ってからふたつ目の形を選びました。
いちばん有利に見えたみっつ目は、10年後を考えて外しました。
それぞれで借りる形は、手続きの費用が2倍になる
2本の契約になるということは、手続きも2回分になります。
事務手数料、保証料、印紙代、登記の費用。これらがそれぞれにかかります。
金額としては、合わせて数十万円の差になることがあります。
借入額が増えるぶん、この費用は相対的には小さいかもしれません。
ただ、契約のときに現金で払う場面が多いので、手元の現金には効いてきます。
だから、この費用も計算に入れます。
金融機関に「2本にした場合の費用の差はいくらですか?」と聞けば、その場で計算してくれます。
相談に乗った方が聞いたときは、差が28万円という答えでした。
28万円あれば、設備をひとつ上げられます。
そう考えると、判断の材料になりました。
費用の差も含めて、3つを並べます。
並べる作業に1時間かかりましたが、その1時間で決まりました。
片方の収入が減った場合の試算を、先にしておく
2人の収入で組む場合、必ずやっておきたい試算があります。
片方の収入が減ったとき、返済が続けられるかどうかです。
理由はいろいろあります。介護、育児、体調の変化、勤め先の状況。
どれも予定して起きるものではありません。
だから、起きた場合を先に計算しておきます。
片方の収入だけで払えるなら、そのまま進めて構いません。
払えないなら、その差をどう埋めるかを先に考えます。
貯蓄で埋めるのか、保険で備えるのか、借入額を減らすのか。手は3つあります。
相談に乗った方は、奥さんの収入がゼロになった場合で計算しました。
その条件だと、返済は払えるが積み立てができなくなる形でした。
それが分かったので、借入額を200万円減らす判断をしました。
厳しいほうの想定をしておくと、逆に安心して進められます。
考えないでおくと、不安だけが残ります。
数字にすると、不安が課題に変わります。課題なら、対処を考えられます。
この試算は、2人でやることに意味がありました。
納める額が減る仕組みの扱いも、形によって変わる
借入がある場合、一定の期間にわたって納める額が減る仕組みがあります。
この仕組みは、借りた人が使えます。だから、2人がそれぞれ借りれば2人とも使えます。
ただし、使えるのは実際に納めている額の範囲までです。
片方の収入が少ない場合、納めている額も少ないので、使い切れないことがあります。
その場合、2本にする利点が小さくなります。
だから、それぞれの納めている額を確かめてから判断します。
源泉徴収票を見れば、年間に納めた額が分かります。
相談に乗った方の場合、奥さんの納める額が小さかったので、2本にしても効果が限られていました。
この計算をして、ふたつ目の形を選ぶ判断が固まりました。
数字を出す前は、2本のほうが有利だと思い込んでいたそうです。
思い込みを数字で確かめる作業でした。
源泉徴収票は、手元にあればすぐ確かめられます。
働き方が変わる可能性を、10年先まで話しておく
いちばん大事なのが、この話し合いでした。
10年後、20年後にどう働いているか。この話を、契約の前にしておきます。
子どもが小学校に上がるとき、中学に上がるとき。生活のリズムが変わります。
親の介護が始まる可能性もあります。
体調のこともあります。
これらを全部予測することはできません。
ただ、可能性として話しておくだけで、選ぶ形が変わります。
相談に乗った方の夫婦は、この話をしていませんでした。
話し始めたら、奥さんが10年後には働き方を変えたいと考えていることが分かりました。
その一言で、判断が変わりました。
数字だけを見ていたら、この情報は出てきませんでした。
35年の話なので、10年先の話をしておく価値があります。
子どもの進学と重なる時期を先に見る
- 横に年を縦に支出を書いた表を作ると山が見える
- 高校と大学の時期は支出が一気に増えていく
- 車の買い替えも同じ時期に重なることがある
- 山に向けて別の口座に積み立てる計画を先に作る
返済は35年続きます。その間に、子どもの進学の時期が来ます。
この帯の収入では、進学の時期と返済が重なると家計がかなり厳しくなります。だから、重なりを先に見ておきます。
見えていれば備えられます。見えていないと、その年に慌てます。この章では、その見方を書きます。
横に年を縦に支出を書いた表を作ると、山が見える
作り方は単純です。横軸に年、縦軸に支出の項目を書きます。
項目は、返済、教育、車、手入れの積み立て、その他。この5つで足ります。
返済は毎年同じ額なので、横一列に同じ数字が並びます。
教育は、子どもの年齢に合わせて入れていきます。
車は、買い替えの予定年に入れます。
手入れの積み立ては、10年目と20年目あたりに大きな数字が入ります。
これを35年ぶん並べると、山がどこに来るかが分かります。
相談に乗った方の場合、8年後と11年後に山がありました。
上の子の高校と下の子の高校が、車の買い替えと重なっていました。
この山を知ってから、そこに向けた積み立てを始めました。
表を作るのは1時間で済みます。
手書きでも構いません。大事なのは、山が見えることです。
作った表は、毎年見直します。
子どもの進路が決まれば、そこの数字が確定します。
確定した数字に置き換えていくと、先の見通しが年々はっきりしてきました。
高校と大学の時期は、支出が一気に増えていく
教育にかかるお金は、進学の段階で大きく変わります。
公的な調査で、学習にかかる費用の目安が公開されています。自分で数字を作らなくても、参考として使えます。
公立か私立か、自宅から通うか離れるか。この2つで金額がかなり変わります。
だから、複数の想定で計算しておきます。
いちばん軽い想定と、いちばん重い想定。この2つを並べます。
重い想定でも成り立つなら、安心して進められます。
成り立たないなら、そのときにどうするかを先に考えます。
相談に乗った方は、2人とも公立に進む前提で計算していました。
私立の場合で計算し直したら、家計が回らない年が出てきました。
そこで、借入額を減らす判断につながりました。
子どもの進路は、親が決められるものではありません。
だから、どちらでも成り立つ形にしておきます。
車の買い替えも、同じ時期に重なることがある
意外と見落とされるのが、車です。
1階建てを建てる地域は、車が必要なことが多くなります。地方だと2台という家庭も珍しくありません。
車は10年前後で買い替えの時期が来ます。1台100万円から200万円という金額です。
2台なら、その2倍です。
この支出が、進学の時期と重なることがあります。
だから、表に入れておきます。
入れておけば、買い替えの時期を1年ずらすという判断もできます。
相談に乗った方は、車の買い替えを2年先送りする計画にしました。
その2年で、進学の山を越えられる見込みが立ちました。
もちろん、車の状態次第では前倒しになることもあります。
ただ、選択肢として持っておけるだけで違います。
何も考えていないと、その年に借りることになります。
車の維持費も、忘れずに入れておきます。
税、保険、車検、燃料。1台あたり月2万円前後という水準です。
買い替えの金額だけでなく、持ち続ける費用も表に入れます。
山に向けて別に積み立てる計画を、先に作る
山が見えたら、そこに向けて積み立てます。
8年後に200万円必要なら、月2万円ずつ積み立てれば届きます。
返済とは別の口座に、毎月自動で移す形にします。
手を動かさなくていいので、続きます。
この積み立ての分も、毎月払える上限から先に引いておきます。
あとから捻出しようとすると、たいてい続きません。
返済6万円、手入れの積み立て1万円、教育の積み立て2万円。合計9万円です。
この9万円が、住居と将来にかかる毎月のお金になります。
今の家賃と比べるときは、この9万円で比べます。
相談に乗った方は、この計算をして返済を5万5千円まで下げました。
選べる家は変わりましたが、35年続けられる形になりました。
数字を下げるのは、あきらめることではありませんでした。
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手元の現金をどこまで入れるかを決める
- 全部を入れると住み始めてから動けなくなってしまう
- 生活費の半年分は手をつけずに口座に残しておく
- 引き渡しの前後に現金が要る場面がいくつかある
- 入居してから半年で出ていく金額も見込んでおく
貯蓄をいくら入れるか。ここも先に決めておきたい部分です。
入れれば入れるほど借入は減りますし、利息も減ります。だから全部入れたくなります。
ところが、住み始めてから半年で100万円以上が出ていきます。手元が薄いと、そこで身動きが取れなくなります。この章では、残す額の決め方を書きます。
全部を入れると、住み始めてから動けなくなってしまう
建物にお金を入れきると、手元が空になります。ところが、暮らしは引き渡しの日から始まります。
カーテン、照明、エアコン、家具、物干し、宅配ボックス。
これらは建物の金額に入っていないことが多い項目です。入っていても、標準の仕様で足りないことがあります。
僕の場合、照明とカーテンだけで80万円かかりました。エアコンを3台入れて、そこで50万円。
合わせて130万円が、引き渡しから2か月で出ました。
この金額を借入に含めることもできますが、含めなければ現金で払います。
だから、その分は残しておきます。残していないと、生活費から出すことになります。
生活費を削ると、住み始めた実感が薄れます。せっかく建てたのに、そこは避けたいところです。
目安として、100万円から150万円を見込んでおくと安心でした。
この帯の収入では、この金額を残すために借入を増やす判断もあり得ます。
利息は増えますが、暮らしの余裕は買えます。
生活費の半年分は、手をつけずに口座に残しておく
目安として、生活費の半年分は残します。月の支出が30万円なら180万円です。
これは家を建てるかどうかに関係なく、持っておきたい額です。
病気やけが、勤め先の状況の変化。何が起きるか分かりません。そのときに、この現金が支えになります。
2人の収入で組む場合は、特にこの備えが要ります。片方の収入が止まったときの緩衝材になるからです。
相談に乗った方は、半年分に加えて家の初期の支出分を別に取りました。
合計で300万円を残す計画にしました。
そのぶん借入は増えましたが、精神的にはずっと楽だったそうです。
夜、通帳の残高を見て不安になることがなくなったと言っていました。
この安心は、利息の差では買えないものだと思います。
数字だけで最適を求めると、この部分が抜けます。
家は住むための場所なので、住み心地には気持ちも含まれます。
引き渡しの前後に、現金が要る場面がいくつかある
借入のお金は、引き渡しのときにまとめて実行されるのが一般的です。
ところが、それより前に払うものがあります。
契約のときの手付金、着工のときの中間金、地鎮祭や上棟の費用。
これらは自己資金で払う場面が多くなります。
つなぎの融資を使う方法もありますが、その場合は手数料がかかります。
だから、いつ何を払うのかを工程表に書き込んでおきます。
工程表の下に、支払いの日と金額を書き足すだけです。
そうすると、いつ現金が必要かが一目で分かります。
その月だけ、他の支出を抑えるという調整もできます。
知らないまま来ると、その月に慌てます。
「支払いはいつ、いくら必要になりますか?」と先に聞いておきます。
会社によって、支払いの時期と比率が違います。
だから、比率も比較の材料に入れます。
着工時に3割の会社と1割の会社では、必要な現金がまるで違います。
「支払いの時期と比率を教えてください」と聞くだけで分かります。
入居してから半年で出ていく金額も、見込んでおく
住み始めてからも、お金は動きます。
足りない家具を買い足す、収納の棚を付ける、物干しを増やす。暮らしてみて分かることは、たくさんあります。
それから、外構を後回しにした場合はその費用も残っています。
僕は外構を2年後にしました。その間、雨の日は玄関前がぬかるみました。正直、不便でした。
だから、駐車場と玄関までの動線だけは先にやっておくべきでした。
後回しにするなら、生活に支障が出ない範囲で線を引きます。
植栽やフェンスは後でも困りません。足元と動線は、先にやったほうがいいです。
この線引きは、住んでから学びました。
相談に乗った方には、この話を先に伝えました。
その方は、駐車場と玄関までを最初の工事に入れました。
先に知っていれば、避けられる不便もあります。
建物にかける額は性能から先に決める
- あとから触れない部分を先に決めておくのが基本
- 1階建ては外に接する面が広く体感に出やすい
- 使える制度は性能の等級によって金額が決まる
- 30年で並べると建てるときの差が逆転してくる
建物にかける額が決まったら、次はどこに使うかです。ここで順番を間違えると、住み始めてから取り返せなくなります。
実家の断熱を後から入れる工事の見積もりを取ったら、200万円を超えました。建てるときなら30万円ほどだったはずの差です。
この構造を知っていれば、決める順番が変わります。この章では、その線の引き方を書きます。
あとから触れない部分を、先に決めておくのが基本
建物には、あとから触れる部分と触れない部分があります。
触れないのは、構造材、断熱材、配管、配線、防水。全部が仕上げの内側に入ります。
これらを替えるには、まず壁や床を壊す必要があります。壊して、直して、また仕上げる。
だから、材料費より工事費のほうが高くなります。建てるときなら、材料の差額だけで済みます。
あとから足せるのは、照明、カーテン、エアコン、収納の棚、外構、物干し。
これらは住み始めてから少しずつ足せます。
だから、予算が足りないときはこちらから削ります。
紙を左右に分けて書いておくと、判断がぶれません。
左に触れない部分、右に触れる部分と書いて、右から削ります。
単純な表ですが、この表があると迷いませんでした。
相談に乗った方にも、この表を作ってもらいました。
作ったあとは、削る判断が早くなったそうです。
1階建ては外に接する面が広く、体感に出やすい
延床30坪の2階建てなら、屋根も基礎も15坪ぶんです。ところが1階建ては、屋根も基礎も30坪ぶんになります。
つまり、外に接する面が広いということです。
だから、断熱の仕様が体感にはっきり出ます。屋根が弱いと夏の室温が上がりますし、床が弱いと冬に足元が冷えます。
逆に、しっかり入っていればエアコン1台で家全体が保てることもあります。
1階建ては仕切りが少ない間取りにしやすいので、空気が回りやすい形です。
この形の良さは、断熱が効いてはじめて出てきます。
僕が見学した家では、20畳のLDKと寝室をエアコン1台でまかなっていました。
住んでいる方に年間の電気代を聞いたら、想像より安くて驚きました。
建物の性能が、そのまま毎月の支出になっている例です。
この帯の収入では、毎月の支出が下がることに大きな意味があります。
だから、断熱と窓には優先して回します。
使える制度は、性能の等級によって金額が決まる
2026年度は、みらいエコ住宅2026事業が動いています。国土交通省、経済産業省、環境省の3省が連携する住宅省エネ2026キャンペーンの一部です。
建物の性能によって、1戸あたりの金額が3段階に分かれています。
詳しくはみらいエコ住宅2026事業の公式サイトで確認できます。
性能を上げると受け取る額は増えますが、そのための工事費も増えます。だから、差額どうしを並べて比べます。
工事費の増加と受け取る額の増加、そこに光熱費の差を足します。
この3つを足すと、判断が変わることがあります。
相談に乗った方は、真ん中の等級を選びました。
いちばん上の等級は、工事費の増加が大きすぎて届かなかったからです。
ただ、真ん中でも受け取る額は小さくありません。
この帯の収入では、その額が計画を左右します。
ただし、受け取れなくても成立する計画にしておきます。
30年で並べると、建てるときの差が逆転してくる
建てるときに80万円安かった家が、30年後には高くなっていることがあります。
断熱を落とすと、毎月の光熱費が上がるからです。
年に3万円違えば、30年で90万円です。建てるときの差額が80万円なら、30年で逆転します。
この計算をしてから決めれば、納得できます。
表計算ソフトで作れば、数字を入れ替えるだけで比べられます。
仕様を上げた場合と、そのままの場合。2列作って並べます。
作るのに2時間かかりましたが、その2時間で迷いが消えました。
住宅金融支援機構のフラット35利用者調査のような統計も横に置いておくと、全国の水準と比べられます。
それ以降、打ち合わせで何か提案されるたびに、この表に入れて確かめました。
その場で判断できるので、持ち帰る回数も減りました。
この表は、相談に乗った方にも渡しました。
車と教育の支出も並べる
- 住居のお金だけを見ていると全体が見えなくなる
- 1階建ての地域は車が必要なことが多くなる
- 毎年の税と保険と積み立ても同じ表に入れる
- 手取りに対する割合で全体を見ると分かりやすい
住居にかかるお金だけを見ていると、家計の全体が見えません。この帯の収入では、全体で見ることが特に大事でした。
相談に乗った方は、返済の額だけを気にしていました。ところが車の維持費と教育の積み立てを足したら、家計に余裕がないことが分かったんです。
1枚の表に全部を並べると、それが見えます。この章では、その並べ方を書きます。
住居のお金だけを見ていると、全体が見えなくなる
家計には、住居のほかにも固定的な支出があります。
車の維持費、保険料、通信費、教育の積み立て、老後の備え。
これらは毎月出ていくので、住居と合わせて考えます。
住居が手取りの2割なら、残り8割で他の全部をまかなうことになります。
その8割の中身を書き出すと、余裕があるかどうかが分かります。
相談に乗った方の場合、車2台で月に4万5千円かかっていました。
保険料が2万円、通信費が1万8千円。
これらを足すと、固定的な支出だけで手取りの半分近くになっていました。
この状態で住居に2割を使うと、残りはかなり少なくなります。
だから、住居の割合を1割8分まで下げる判断をしました。
全体を書き出さなければ、この判断はできませんでした。
書き出すのは、通帳と明細を見ながら30分ほどの作業です。
ひと月ぶんを書き出せば、おおよその形が見えます。
季節で変わる項目だけ、年間で割って足しておきます。
1階建ての地域は、車が必要なことが多くなる
1階建ては広い敷地が要るので、地方や郊外で建てることが多くなります。
そういう地域では、車が生活に必要です。1人1台という家庭も珍しくありません。
車の維持費は、税、保険、車検、燃料、駐車場。合わせると1台あたり月2万円前後になります。
2台なら、月4万円前後です。
これは住居の半分近い金額になることもあります。
だから、地域を選ぶときに車の台数も考えます。
駅から近い地域なら1台で済むかもしれません。ただ、敷地の価格は上がります。
敷地が安い地域なら建物に回せますが、車が2台必要になります。
この2つを、30年の合計で比べます。
相談に乗った方は、この比較をして駅から少し離れた地域を選びました。
車は2台になりましたが、総額では有利という計算でした。
ただし、この計算は生活の形が変わると崩れます。
子どもが独立すれば、車は1台で足りるかもしれません。
だから、10年ごとに見直す前提で組んでおきます。
毎年の税と保険と積み立ても、同じ表に入れる
持ち家になると、毎年かかるものが3つ増えます。
建物と敷地にかかる税、火災と地震の保険料、手入れのための積み立て。
税は地域と建物の規模で変わりますが、年に12万円から18万円という帯が多くなります。
保険料は、まとめて長期で契約すると割安になります。
積み立ては、10年後の外壁と屋根の工事に備えるものです。月1万円が目安になります。
この3つを月に直すと、2万円から3万円です。
返済とは別に、これだけ出ていきます。
だから、返済だけを家賃と比べても意味がありません。
3つを足した数字で比べます。
税の目安は、市の税務課に電話すれば計算してもらえます。
建てる場所と建物の規模を伝えるだけで、その場で出してくれます。
年に14万円なら、月に1万2千円弱です。この数字を家計に組み込んでおきます。
この帯の収入では、この3つの重さが判断を変えることがあります。
先に引いておけば、あとで苦しくなりません。
手取りに対する割合で全体を見ると、分かりやすい
金額で並べると、大きさが実感しにくくなります。
だから、手取りに対する割合に直します。
住居が2割、車が1割2分、保険が6分、通信が5分。このように並べます。
割合にすると、どこが重いかが一目で分かります。
重い項目から見直せば、住居に回せる分が増えることもあります。
相談に乗った方は、通信費を見直して月8千円下げました。
年間で9万6千円、35年で336万円になります。
住居の話をしていたはずが、通信費の話になったわけです。
ただ、家計は全体でひとつなので、これも正しい進め方でした。
どこを削っても、住居に回せる分は増えます。
割合で見ると、この気づきが得られます。
10年ごとに計画を見直す習慣をつくる
- 建てたあとも状況は変わり続けていくことになる
- 繰り上げて返すかどうかは年に1回だけ考える
- 借り換えという選択肢も頭の片隅に入れておく
- 10年目の手入れに向けて残高を確かめておく
計画は、建てたときで終わりません。35年続くので、途中で見直す機会が必要になります。
ただ、毎月見直していると疲れます。年に1回、決まった時期に見るくらいがちょうどよかったです。
この習慣があるかどうかで、35年の結果が変わります。この章では、その続け方を書きます。
建てたあとも、状況は変わり続けていくことになる
収入は変わります。上がることもあれば、下がることもあります。
家族の構成も変わります。子どもが独立すれば、教育にかかるお金はなくなります。
金利も動きます。変動を選んでいれば、返済額が変わることもあります。
制度も変わります。使える仕組みが増えることも、なくなることもあります。
だから、建てたときの計画をそのまま35年続けるのは現実的ではありません。
途中で見直す前提で作っておきます。
見直すタイミングを、あらかじめ決めておくと楽です。
年末や、確定申告の時期に合わせると忘れません。
相談に乗った方は、毎年1月に見直すことにしました。
1年に1回、1時間だけ表を開く。それだけの習慣です。
続けていれば、変化に気づけます。
見直すのは、1時間で足ります。
表を開いて、去年の数字と今年の数字を並べるだけです。
大きく変わっていなければ、そのまま閉じて構いません。
繰り上げて返すかどうかは、年に1回だけ考える
余裕が出た年に、繰り上げて返すという選択があります。
ただし、毎月考えていると疲れます。年に1回だけ考えるくらいでちょうどいいです。
見直しのときに、手元の現金を確かめます。生活費の半年分と、これから使う予定の分を引いて、残りがあれば繰り上げを考えます。
ただし、全部を繰り上げに回さないほうがいいです。
手元の現金を減らすと、何かあったときに動けなくなります。
だから、残す分を先に決めてから、余った分だけを回します。
相談に乗った方は、年に1回20万円を上限にしていました。
できない年があってもいいように、義務にはしていません。
義務にすると、できなかったときに苦しくなります。
目標として持っておくくらいが、続けやすい形でした。
それでも20年続ければ、400万円になります。
借り換えという選択肢も、頭に入れておく
金利の水準が変われば、借り換えという選択肢が出てきます。
今より低い金利で借り直せば、総額が減ることがあります。
ただし、借り換えにも費用がかかります。事務手数料、保証料、登記の費用。
合わせて数十万円かかることもあります。
だから、減る額と費用を並べて比べます。
金利の差が0.5%以上あって、残りの期間が10年以上あるなら、検討する価値が出てきます。
この判断も、年に1回の見直しのときにします。
金融機関のサイトで、その時点の金利を確かめるだけです。
5分で終わります。
差が小さければ、そのまま続けます。
差が開いていたら、そのときに詳しく調べます。
借り換えには、審査もあります。
勤め先や健康の状態が変わっていると、通らないこともあります。
だから、条件が良いうちに動くという考え方もあります。
そこも含めて、年に1回だけ確かめます。
10年目の手入れに向けて、残高を確かめておく
10年目が近づいたら、手入れの準備を始めます。
外壁と屋根の状態を見てもらって、必要な工事の見積もりを取ります。
積み立てた残高で足りるかどうかを確かめます。
足りなければ、そこから2年ほどかけて積み増します。
足りているなら、そのまま進めます。
1階建ては外壁の面積が2階建てより小さくなることが多いので、その部分は抑えられます。
ただし、屋根の面積は広いです。
だから、屋根の工事の金額を先に確かめておきます。
相談に乗った方は、8年目に一度見積もりを取る計画にしました。
2年の余裕があれば、足りない分を積み増せます。
準備が早いほど、選べる選択肢が増えます。
この習慣も、年に1回の見直しの中に組み込んでおきます。
まとめ:2人で決めた数字は途中で崩れない
この帯の収入では、2人の収入をどう扱うかが最初の分かれ目になります。合算すれば借りられる額は増えますが、その分だけ将来の身動きが縛られます。だから、1人だけで組んだ場合と2人で組んだ場合の枠を両方出して、並べてから決めます。そのうえで、片方の収入が減った場合の試算をしておく。ここまでやれば、35年続けられる形になります。
相談に乗った方の夫婦は、それぞれで借りる形が有利だと聞いていました。たしかに借りられる額はいちばん大きくなります。ところが10年後の話をし始めたら、奥さんが働き方を変えたいと考えていることが分かりました。数字だけを見ていたら、この情報は出てこなかったはずです。表を作る作業は、結局のところ話し合いのきっかけを作る作業でもありました。1人で作った数字は途中で崩れて、2人で決めた数字は崩れませんでした。
まずは、10年後にどう働いているかを2人で話してみてください。数字の前に、その話からです。
- 1人で組んだ場合と2人で組んだ場合の枠を両方出す
- 組み方は3つあり借りられる額と費用と身動きが違う
- それぞれで借りる形は手続きの費用が2倍になる
- 片方の収入が減った場合の試算を先にしておく
- 横に年を縦に支出を書いた表で山の位置を見る
- 教育の山と車の買い替えが重なることがある
- 手元には生活費の半年分と初期の支出分を残す
- あとから触れない部分を先に決めて右から削る
- 固定的な支出を手取りに対する割合で並べ直す
- 年に1回だけ見直す習慣を最初に決めておく
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