
親と一緒に平屋を建てる。その話が出たとき、最初に問題になったのは坪数ではありませんでした。
誰が、いくら出すのか?
この一言で、テーブルの空気が変わったのを今でも覚えています。
国税庁のタックスアンサーNo.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税には、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に贈与を受けた場合が対象と書かれています。
令和8年は、今年です。
省エネ等住宅なら1,000万円まで、それ以外の住宅なら500万円まで。金額の大きさより、期限が今年の12月末に置かれていることのほうが、僕には重く見えました。親から資金を入れてもらう前提で考えている家にとっては、着工の時期と贈与の時期をどう並べるかという話になってくるからです。
ただ、税金の枠より先に決めることがあります。どこまでを一緒に使って、どこから分けるのか。この線の引き方で、建物の大きさも、設備の数も、毎月の払い方も、全部が変わってきました。
同じ町内に、親の土地に平屋の二世帯を建てた人がいます。設計の打ち合わせで半年もめたのは、部屋の広さでも予算でもなく、玄関を2つにするかどうかだったそうです。お母さんは「別々のほうが気をつかわない」と言い、その人は「1つで十分」と言って、譲らないまま図面が3案まで増えました。
結局、玄関は1つにして、内側に引き戸を入れる形で落ち着いたと聞きました。決め手になったのは金額ではなく、10年後にどちらかが使わなくなったときの話だったそうです。
この記事では、平屋の二世帯にかかるお金を、同居の形、延べ床と敷地、水回りの設備、玄関、毎月のメーター、親の資金と名義、そして将来の使い道という順番で見ていきます。
- 完全同居・一部共用・完全分離で増える設備の数が変わる
- 平屋は増えた延べ床がそのまま屋根と基礎の面積になる
- 車が2台から3台になるので置き場の面積が先に乗る
- メーターを分けるかどうかは毎月の払い方の約束で決まる
- 親の資金は出した額と登記の持分をそろえておく
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平屋で二世帯を建てる費用は、同居の形で決まっていく
- 完全同居は設備が1セットなので延べ床の増え方がいちばん小さい
- 一部共用はトイレ・洗面・キッチンのどれを2つにするかを個別に決める
- 完全分離は生活に要るものが全部2つずつ並ぶ建て方になる
- 3つの形で増える設備の数を数えると予算の組み方が見えてくる
二世帯という言葉には、実は3つの中身が入っています。どれを選ぶかで、見積書に並ぶ行の数がまるで変わりました。
僕が図面を見せてもらった家の中に、同じ48坪で見積もりを取ったのに、金額が900万円ちがう2軒がありました。片方は親の個室とトイレだけを足した家、もう片方は玄関からキッチンまで2つずつ用意した家です。坪数が同じでも、中身が別物でした。
だから最初に、この3つの形の違いから押さえます。
完全同居は、設備を1セットで済ませる形
完全同居は、玄関もLDKも浴室もキッチンも1つずつ。親の個室だけを別に用意する形です。
世帯は2つでも、家としては大きめの一戸建てに近い作りになります。
増えるのは個室と、その周りの収納と、そこへ行くための通路だけ。設備の行がまるごと増えないので、3つの形の中では延べ床の増え方がいちばん小さく収まりました。
4人家族の30坪に親の個室と収納を足すと、35坪から38坪あたりに落ち着く図面が多かったです。
5坪から8坪の増加。
この形を選ぶ家に共通していたのは、食事の時間が一緒だということでした。朝も夜も同じ食卓につくなら、キッチンを2つ持っても片方が使われません。使わない設備は、買ったときの金額だけでなく、置いた場所の坪数ぶんも毎年の固定資産税に乗ってきます。
気をつけたいのは、トイレの数です。
完全同居でも、トイレだけは2か所にする家がほとんどでした。朝の時間帯が重なるのと、夜中に廊下を長く歩かずに済むという理由です。親の個室の近くにもう1か所置くだけなら、坪数にして1坪弱でした。
完全同居でも、親の個室の近くにトイレを1か所足す形がいちばん多く見られました。
ここまでが、いちばん軽い形です。
一部共用は、どこを2つにするかを1つずつ決める
一部共用は、名前のとおり途中まで一緒に使う形です。
玄関とLDKは共有して、トイレと洗面だけを2つにする。あるいは、玄関だけ共有して、その先は全部分ける。境目をどこに置くかは家ごとに違いました。
この形のいいところは、予算に合わせて刻めることです。
トイレだけ2つ、洗面も2つ、ミニキッチンも足す、浴室は1つのまま。こうやって1つずつ足したり引いたりできるので、見積もりを見ながら調整が効きました。
僕が見た48坪前後の二世帯の図面では、この一部共用がいちばん多い形でした。
逆に、刻めることが決めにくさにもなります。
どこまで一緒に使うかは、お金ではなく生活の話だからです。ここを設計の打ち合わせの場で初めて話すと、親世帯と子世帯のあいだで意見が割れて、図面が止まります。さきほどの玄関で半年もめた家も、この線引きを図面の前にやっていませんでした。
おすすめの順番があります。
先に、朝起きてから夜寝るまでの動きを、両方の世帯ぶん紙に書き出すことです。何時に起きて、どこで顔を洗って、どこで朝食を取って、何時に出て、何時に風呂に入るか。この紙を並べると、重なっている時間帯がはっきりします。重なっているところだけを2つにすれば足りました。
2つにするものは、生活の時間が重なっている設備だけで足ります。
完全分離は、家がもう1軒ぶん増える考え方
完全分離は、玄関から水回りまで全部が2つずつ。間の扉で行き来する形です。
建物としては1つですが、中身は住まいが2軒並んでいるのと近くなります。
平屋でこれをやると、左右に分ける形がほとんどでした。2階建てなら上下で分けられますが、平屋は同じ地面に横並びで置くしかないからです。
横に並べるということは、間口がその分だけ要るということでした。
子世帯25坪と親世帯20坪を横に並べると、延べ床は45坪、建物の横幅は18mを超えてきます。
この横幅が、土地探しでいちばん効きます。
面積が足りていても、道路に面した幅が15mしかない区画では、左右分離の平屋が素直に入りませんでした。奥に向かって細長く伸ばす形にすると、今度は真ん中の部屋に光が届かなくなります。延べ床が連れてくるものを1つずつ数えた考え方は、平屋40坪4LDKで屋根と通路がどう増えるかを数えた記事にまとめました。
そのかわり、完全分離には他の形にない利点があります。
片方の世帯が使わなくなったとき、そこだけを貸したり、独立した住まいとして使ったりできることです。これは建てた時点では見えにくい価値ですが、20年先を考えると効いてきました。
3つの形で、増える設備の数を並べてみた
ここまでの話を、設備の数で並べ直します。
4人家族の平屋30坪を出発点にして、そこに親世帯を足したときに何が増えるのかを数えました。
- 完全同居は個室1つ・収納・トイレ1か所ぶんが増えて35坪から38坪
- 一部共用は個室とLDKの一部・トイレと洗面が2つで40坪から45坪
- 完全分離は玄関・LDK・浴室・キッチン・トイレが2つずつで45坪から55坪
坪数の幅が、形の違いをそのまま表しています。
同じ二世帯という言葉でも、完全同居と完全分離では延べ床が15坪以上ひらきます。
15坪は、6畳の部屋にして7つぶん。
平屋の本体工事が1坪あたり80万円の会社なら、この15坪だけで1,200万円の差になります。坪単価が同じでも、総額がここまで動く理由は、形の違いが坪数の違いになって出てくるからでした。
金額を先に決めてから広さを配る考え方は、平屋2500万円で35坪と二世帯のどちらを取るかを並べた記事でも書きました。予算の上限がはっきりしている家では、形のほうを予算に合わせる順番になります。
どの形にするかが決まったら、次はその形が土地に載るかどうかです。
延べ床が増えるほど、屋根と基礎の面積も連動する
- 親世帯の個室と水回りで延べ床に10坪前後が上乗せされる
- 平屋は増えた延べ床がそのまま屋根と基礎の面積として乗ってくる
- 車が2台から3台になると置き場だけで15坪前後が必要になる
- 登記簿の床面積240㎡という線は贈与の特例の条件にも出てくる
二世帯の平屋でいちばん見落とされやすいのが、建物ではなく地面のほうです。
2階建てなら、増えた床を上に積めます。親世帯を1階、子世帯を2階と分ければ、地面に接する面積は変わりません。平屋にはその逃げ道がなく、増えた床がそのまま地面の面積になりました。
どこがどれだけ増えるのかを、4つに分けて数えていきます。
親世帯の個室と水回りで、延べ床に10坪前後が乗る
親世帯のために足す床を、部屋ごとに積み上げてみます。
寝室が8畳で約13.2㎡、4坪。
そこに収納を1坪、トイレと洗面で1.5坪、小さな居間を6畳で1.8坪。
ここまでで8.3坪です。
この4つをつなぐ通路と、壁の厚みぶんを足すと、10坪前後になりました。1坪は約3.30578㎡なので、10坪は33㎡ほど。30坪の家に足すと、40坪の平屋になる計算です。
親世帯の個室・収納・トイレ・洗面・居間をそろえると、通路まで含めて10坪前後が上乗せされます。
ここに浴室とキッチンを足すかどうかが、次の分かれ道でした。
浴室は洗い場と浴槽で1.5坪から2坪、脱衣所を足すとさらに1坪。キッチンはフルサイズなら2坪前後で、その前に立つ通路も要ります。両方を足すと、10坪だった上乗せが15坪を超えてきました。
もうひとつ、親世帯側だけ寸法が変わる部分があります。
バリアフリーの寸法です。
廊下の幅を91cmではなく1mに広げる、トイレの開口を引き戸にして有効幅を広く取る、浴室の出入りの段差をなくす。この3つを入れておくと、親世帯側の水回りまわりで0.5坪から1坪ほど余分に要りました。平屋はもともと階段がないので、ここを足すだけで老後まで使える寸法になります。
数字にすると単純ですが、この5坪の差が、土地に載るかどうかの境目になることがあります。
屋根と基礎は、増えた延べ床とそのまま同じだけ広がる
平屋の費用の話で、坪単価に表れにくい部分がここです。
建物を真上から見た面積が、そのまま屋根と基礎の面積になります。
30坪の平屋に10坪足して40坪にすると、屋根も基礎も10坪ぶん増えます。2階建てで10坪増やす場合は、2階に積めば屋根も基礎も増えません。
平屋で延べ床を10坪増やすと、屋根と基礎がそれぞれ10坪ぶん増えることになります。
屋根には勾配が付くので、実際の面積はもう少し増えました。
4寸勾配なら、水平に見た面積の約1.08倍。10坪、33㎡の増加なら、屋根材と下葺きの防水シートと野地板が35㎡ぶん増える計算になります。
基礎のほうはもっと分かりやすいです。
コンクリートと鉄筋と型枠が、地面に接した面積だけ増えます。そこに地盤改良が必要な土地だと、改良を打つ範囲も建物が載る面積に連動するので、増えた10坪ぶんの本数が足されました。
この3つは、間取りを工夫しても減らせません。延べ床を決めた時点で、自動的に決まってしまう部分です。だから二世帯の図面では、部屋の配置よりも先に、建物の外周の形を四角に近づけられるかどうかを見ていました。同じ45坪でも、複雑な形にするほど屋根の谷が増えて、雨仕舞いの手間が乗ってくるからです。
車が2台から3台になると、置き場に15坪前後が要る
二世帯で忘れられがちなのが、車です。
世帯が2つになると、車も2台から3台になります。
親世帯が運転をやめていても、通院の送り迎えに使う車と、子世帯の通勤の車は別でした。子どもが免許を取れば、そこにもう1台が加わります。
普通車1台分の駐車スペースは、幅2.5m×奥行き5m、12.5㎡で約3.8坪。
3台なら37.5㎡、約11.3坪。そこに車の前後を通る動線を足すと15坪前後になります。
15坪は、親世帯の個室と水回りを全部足したのとほぼ同じ広さです。
この面積を敷地のどこに取るかで、建物の置き方が決まります。道路に面した側を全部駐車場にすると、建物が奥に下がって、玄関までのアプローチが長くなりました。横一列に3台並べるには、間口が8m近く要ります。
建物の横幅と駐車場の幅を足した数字が、必要な間口です。
左右分離の平屋を横18mで建てて、その前に3台を横並びにすると、間口だけで20m以上が必要になります。
縦列に並べる形なら間口は足りますが、奥の車を出すときに手前の車をどかすことになります。毎日出る車を手前に置くという順番を、図面の段階で決めておきました。
登記簿の床面積240㎡という線を、先に知っておく
もうひとつ、延べ床には税の側から引かれている線があります。
さきほどの国税庁のタックスアンサーNo.4508には、住宅取得等資金の贈与の非課税を使う条件として、登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下であることが書かれています。
240㎡は、約72.6坪。
平屋の二世帯で55坪、182㎡なら、まだ余裕があります。
完全分離で子世帯35坪・親世帯30坪の65坪まで広げても、215㎡なので240㎡には収まりました。
ただ、ここに車庫を建物に組み込んだり、広い土間収納を取ったりして延べ床が伸びると、線に近づいてきます。
同じページには、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が、贈与を受けた人の居住の用に供されるものであることという条件も書かれていました。
二世帯では、ここが効いてきます。
子が贈与を受ける場合、家全体の半分以上が子の住む部分になっているかどうかが条件に入ってきます。
親世帯のほうを大きく取った図面だと、この条件の見え方が変わってきます。どこまでが誰の居住部分にあたるのかは、間取りと登記の仕方で判断が分かれる部分なので、図面が固まった段階で税理士に確かめておくのが安全でした。僕自身は税の専門家ではないので、ここは条件が書いてあるという事実までにとどめます。
2つ目のキッチンと浴室で動く金額
- 浴室を2つにすると面積と給湯の両方が同時に増えていく
- 給湯器を2台にするか1台でまかなうかで配管の引き方が変わる
- 洗濯機の置き場と干す場所は世帯ごとに要ることが多い
- 2つ目のキッチンは換気のダクトと排水の勾配で位置が決まる
- 設備を2つ持つと入れ替えの時期も2回ぶんやってくる
水回りは、二世帯の見積書でいちばん金額が動く場所です。
ただ、動く理由は本体の値段だけではありませんでした。置く場所、つなぐ配管の長さ、抜く換気の経路。この3つが、同じ設備でも金額を変えます。
1つずつ、何が付いてくるのかを見ていきます。
浴室を2つにすると、面積と給湯の両方が増える
二世帯で最初に相談されるのが、浴室でした。
入る時間帯が重なるかどうか、という話から始まります。
親世帯が夕方に入り、子世帯が夜に入るなら、1つで足りている家が多かったです。逆に、子どもの入浴と親の入浴がどちらも19時台という家では、待ち時間が毎日発生しました。
2つ目の浴室を足すと、何が増えるのでしょうか?
ユニットバスの本体、洗い場の床、脱衣所、換気扇、給水と給湯と排水の配管、そして窓。
1616サイズのユニットバスと脱衣所をそろえると、面積だけで2.5坪から3坪が要ります。
この2.5坪を、他の部屋から削ることになります。
浴室は湿気を外に出す経路が要るので、家の中心には置きにくい設備でした。外壁に面した位置に置いて、窓か換気扇で抜きます。左右分離の平屋なら、それぞれの世帯の外壁側に1つずつ置けるので、この点では無理がありませんでした。
浴室を2つにするときは、どちらも外壁に面した位置を取れるかを図面で先に確かめます。
1つのままにする家では、脱衣所を広めに取って、洗面台を2つ並べる形が多かったです。順番待ちの原因は浴槽ではなく、洗面と着替えの場所が1組しかないことだったという話をよく聞きました。
給湯器を2台にするか、1台でまかなうか
浴室を2つにすると、次に出てくるのが給湯器の話です。
ここは、2台にする家と1台のままの家に分かれました。
1台でまかなう場合、24号などの大きめの号数を選んで、配管を2か所に分けます。同時にお湯を使う時間が重ならなければ、これで足りていました。
2台にすると、機器がもう1台と、設置の工事と、電源の回路が増えます。
エコキュートのような貯湯式は、タンクを置く場所が1台につき1畳弱要るので、2台にすると置き場所の確保から始まります。
タンクは重いので、基礎も要りました。
平屋は屋根に上げられないぶん、機器がすべて地面に並びます。エアコンの室外機、給湯器、タンク。二世帯だと、この数が単純に増えていきました。家のまわりを一周する通路が、機器でふさがらないかどうかを図面で見ておきます。
平屋の二世帯は、屋外に並ぶ機器の数が増えるので、置き場所を先に図面へ描いてもらいます。
光熱費の分け方を先に決めている家では、給湯器も2台にすることが多かったです。1台だと、どちらがどれだけお湯を使ったかが分からないからでした。
洗濯機の置き場と干す場所は、世帯ごとに要る
浴室やキッチンほど話題になりませんが、実際にいちばん意見が出たのが洗濯でした。
洗濯は、毎日あります。
そして、洗うものを一緒にするかどうかは、かなり個人的な話でした。下着やタオルを分けたいという声は、親世帯からも子世帯からも出ます。
洗濯機置き場を2つにすると、防水パンと給水と排水が2セット。
洗濯機置き場は1か所あたり0.5坪ほどですが、その前に立つ場所と洗剤の置き場を足すと1坪近くになります。
干す場所のほうが、面積を食いました。
室内で干すなら、物干しを吊る場所が2か所。外に干すなら、日の当たる動線が2本要ります。平屋は洗濯物を持って階段を上がらなくて済むので、この点は楽でした。洗濯機から物干しまでの距離が短い図面だと、毎日の手間がかなり違ってきます。
外に干す場所を片方の世帯の窓の前に取ってしまうと、視線の問題が出ました。図面の上では空いている場所でも、そこに洗濯物が並ぶとどう見えるかまで想像しておきます。
2つ目のキッチンは、換気のダクトと排水の勾配で位置が決まる
キッチンは、置く場所の自由度がいちばん低い設備でした。
理由は2つあります。
1つは、コンロの上の換気を外まで抜かなければならないこと。もう1つは、排水を勾配で流すので、桝までの距離と高さが決まることです。
換気のダクトは、短いほど抜けがよくなります。
家の中心にキッチンを置くと、ダクトを天井裏で長く引き回すことになりました。平屋は天井裏の高さが取りやすいので2階建てより融通は利きますが、それでも曲がりの回数が増えると抜けが落ちます。
2つ目のキッチンは、外壁までの距離が短い場所に置くと、換気の経路が素直になります。
排水のほうは、床下の高さで決まります。
キッチンの排水は油と食べかすを含むので、勾配が足りないと流れが悪くなりました。1つ目のキッチンから離れた場所に2つ目を置くと、床下を長く配管が走って、その分だけ落差が要ります。
2つのキッチンを背中合わせか近い位置に置くと、換気も排水も短く済んで工事が軽くなります。
ミニキッチンという選び方もありました。幅120cm前後で、流しとコンロ1口が入る大きさです。朝食とお茶だけなら、これで回っていた家が多かったです。
設備を2つ持つと、入れ替えの時期も2回ぶん来る
建てるときの金額だけでなく、そのあとの話もしておきます。
設備には、入れ替えの時期があります。
給湯器、ユニットバス、キッチン、エアコン。どれも建てた日から年数が進んでいきます。
2つ持つということは、その時期が2回ぶん来るということでした。
給湯器を2台にすると、入れ替えの出費も2台ぶん並んで来ることになります。
これは、2つにしないほうがいいという話ではありません。
2つにする価値があるなら、そのぶんの積み立てを最初から資金計画に入れておく、という話です。建てたあとに毎月いくらを残しておくかまで含めた組み方は、借りられる額ではなく返せる額から資金計画を組む手順に書きました。
同じ時期に2台が止まらないように、片方を数年ずらして入れ替える家もありました。
親世帯のほうの設備は、将来その部分の使い方が変わる可能性があります。使わなくなるかもしれない設備に、建てる時点で最上位の機種を入れる必要はありませんでした。どこに厚みを置いて、どこを標準で済ませるか。二世帯では、この配分を世帯ごとに変えられるところが、かえってやりやすい部分です。

玄関を2つにすると、通路と収納がふくらむ
- 玄関を2つ置くと土間と下足入れとホールが2組ずつ必要になる
- 左右に分けた平屋は建物の中を通る廊下が2本走ることになる
- 玄関を1つにして内側の引き戸で行き来を仕切る形もある
- 宅配と来客の受け方は玄関の数と位置で変わってくる
玄関は、二世帯でいちばん意見が割れる場所でした。
面積としては大きくありません。けれど、ここを2つにするかどうかで、家の中の通り道が根本から変わります。冒頭に書いた、半年もめた家の話がまさにこれでした。
数字と生活の両方から見ていきます。
玄関2つは、土間と下足入れが2組になる
玄関を1つ足すと、何がセットで付いてくるのかを並べます。
土間、上がり框、ホール、下足入れ、そして照明とインターホン。
土間が1.5畳、ホールが1.5畳、下足入れの奥行きぶんで、1か所あたり1.5坪前後でした。
玄関をもう1つ作ると、土間とホールと下足入れで1.5坪から2坪が増えます。
坪単価80万円なら、120万円から160万円。
玄関ドアそのものも、断熱性能のある製品だと1台で20万円から40万円ほどします。2つになれば、そこも2倍でした。
外まわりにも影響が出ます。
玄関が2つあるということは、道路からそこへ向かうアプローチも2本要るということでした。土間コンクリートの面積、ポーチの階段、それぞれの照明。外構の見積書で、この2本目が地味に乗ってきます。
玄関を2つにすると、建物の中だけでなく外構のアプローチも2本ぶん必要になります。
表札とポストをどうするかも、決めておきます。2つ並べるのか、1つにまとめるのか。ここは金額の話というより、外から見たときにこの家がどう見えるかという話でした。
左右に分けると、通路が2本走ることになる
玄関を2つにすると、その先の通路も2本になります。
これが、平屋でいちばん効く部分でした。
2階建ての上下分離なら、通路は階段1本でつながります。左右分離の平屋は、それぞれの玄関から各部屋へ向かう廊下が、建物の中を並走することになりました。
幅91cmの廊下が10m走ると、約9.1㎡、2.8坪。
この廊下が2本になると、通るだけの床が5坪を超えてくる図面もありました。
5坪は、8畳の部屋2つ分に近い広さです。
削る方法はありました。それぞれの世帯のLDKを玄関のすぐ近くに置いて、そこから各部屋へ直接入る形にすると、長い廊下が短い通路に変わります。回遊できる配置にして、廊下の一部を収納の前の通路と兼ねる案もありました。
通路の坪数は、図面の方眼を数えれば自分で出せます。91cmのマスが4つでおよそ1坪です。
届いた図面を3社ぶん並べて、通路の坪数だけを数えてみたことがあります。同じ延べ床、同じ部屋数なのに、いちばん短い案といちばん長い案で2坪以上の差がありました。
玄関1つのまま、内側の引き戸で行き来を分ける
玄関を1つにして、別の方法で距離を取る形もあります。
内側に引き戸を1枚入れるやり方です。
玄関ホールから先で、親世帯側と子世帯側に分かれる位置に引き戸を置きます。昼間は開けておいて、夜だけ閉める。それだけで、音の通り道と冷暖房の効く範囲が分かれました。
引き戸1枚なら、工事としては数万円から十数万円の話です。
玄関を2つ作る代わりに引き戸を1枚入れると、増える坪数はほぼゼロで済みます。
浮いた1.5坪から2坪を、土間収納に回した家がありました。
二世帯は、靴も傘もベビーカーも車椅子も、置くものが増えます。玄関を2つに分けて小さい土間を2つ持つより、1つの広い土間をみんなで使ったほうが、実際には収まりがよかったという話は何度か聞きました。
この形を選ぶなら、引き戸の位置だけは図面の段階で決めておきます。あとから廊下に建具を足すのは、壁と枠を作る工事になるからです。床の見切りと壁の下地を先に入れておけば、5年後に建具だけを足すこともできました。
宅配と来客の受け方も、玄関の数で変わってくる
毎日のことで意外と効いてきたのが、宅配でした。
玄関が2つあると、宅配の人はどちらに届ければいいのかが分かりません。
表札が2つ並んでいても、荷物の宛名と表札の名字が同じなら、判断がつかない場合があります。結果として、いつも片方の玄関にまとめて届くようになった家がありました。
宅配ボックスを置くなら、位置を先に決めておきます。
玄関を2つにするなら、宅配ボックスと表札とポストの並べ方まで図面で決めておきます。
来客のほうも同じでした。
親世帯を訪ねてくる人と、子世帯を訪ねてくる人は別です。玄関が1つだと、どちらの来客も同じ場所で受けることになります。ここを気にする家では、玄関のすぐ横に4.5畳ほどの和室を置いて、引き戸で仕切れるようにしていました。
日中に家にいる時間が長いのは、たいてい親世帯のほうです。誰がいちばんインターホンに出るのかを考えると、モニターをどこに付けるかも決まってきました。台所と親世帯の居間の2か所に付けておくと、毎日の動きが楽になります。
親世帯と子世帯の希望を両方書いて渡すと、条件に合う会社が無料で提案を作ります。
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届くのは、わが家のために描かれた平屋の計画書
住宅展示場でもらうカタログは、誰にでも同じ1冊です。平屋住宅特集で届くのは、あなたの希望から作られた、あなたの家のための資料です。
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- 間取りプラン(家族の人数と暮らし方に合わせた平屋の図面)
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提携している住宅会社は1,280社以上です(タウンライフ家づくり公式サイト、2026年9月現在・同社調べ)。
電気と水道のメーターを分けるかは、毎月の払い方の約束で決まる
- 電気を2契約にすると引き込みと分電盤が2系統になる
- 水道の2本目は前面道路の工事と加入金がセットで付いてくる
- 都市ガスとプロパンでは2つに分けるときの手間が違う
- 1契約のままにするなら毎月の分担の決め方を先に話し合う
ここは設備の話に見えて、実際には家族の約束の話でした。
毎月の請求書を、どちらがどう払うのか。分けるなら、そのための工事が着工前に要ります。あとから分けようとすると、道路を掘るところから始まることもありました。
3つの引き込みを、順番に見ていきます。
電気を2契約にすると、引き込みと分電盤が2系統になる
電気は、3つの中ではいちばん分けやすい引き込みでした。
とはいえ、無料ではありません。
2契約にすると、電力会社からの引き込み線が2本、電力量計が2つ、分電盤が2面になります。建物の中の配線も、どちらの分電盤から出ているかを最初から分けて配ることになりました。
電気を2契約にすると、基本料金が毎月2つぶんかかり続けます。
年にすると、数万円の差。
そのかわり、使った分をそれぞれの世帯が払う形になります。エアコンを一日中つけている世帯と、日中は誰もいない世帯が同じ請求書を分け合うと、どうしても気持ちの上で引っかかる部分が出ました。
子メーターという方法もあります。
契約は1つのままで、親世帯の使用量だけを測る計器を内側に付ける形です。工事は軽く済みますが、測った数字をもとに毎月精算する手間が残りました。誰がその計算をするのかを決めておかないと、いつの間にか誰も見なくなります。
計器を分けるかどうかより、毎月誰が数字を見て精算するのかを先に決めておきます。
太陽光を載せる場合は、どちらの契約に紐づけるかも決めることになりました。
水道の2本目は、前面道路の工事と加入金が付いてくる
3つの中でいちばん動かしにくいのが、水道です。
理由は、道路の下にあるからでした。
敷地に引き込む水道管を2本にするには、前面道路を掘って本管から分岐させます。掘ったあとは道路を元に戻す工事も要るので、ここだけで数十万円が動きました。
さらに、多くの自治体では加入金や分担金と呼ばれるお金がかかります。
水道の加入金は口径ごとに金額が決まっていて、2本目を引けばもう一度かかる自治体があります。
金額は市町村ごとに違います。
住む予定の市区町村の水道局のページに、口径別の表が出ていることが多いので、そこで確かめておきました。20mmと25mmで金額が変わるので、二世帯で水を同時に使うことを考えて口径を上げるなら、その分も見ておきます。
水道だけは、建てたあとに分けると道路の復旧まで含めた工事になるので、着工前に決めておきます。
1本のまま引いて、敷地の中で子メーターを付ける家もありました。この場合、水道局への支払いは1つにまとまるので、精算は家族のあいだで行うことになります。
都市ガスとプロパンでは、分けるときの手間が違う
ガスは、供給の形で話が変わりました。
都市ガスの地域なら、メーターを2つにして2契約にできます。
建物の中の配管を2系統に分けて、それぞれにメーターを付ける形です。電気ほど簡単ではありませんが、道路を掘る水道よりは軽く済みました。
プロパンの場合は、ボンベの置き場が論点になります。
プロパンを2契約にすると、ボンベの置き場も2か所要ることになります。
ボンベは屋外の、道路から近い場所に置きます。
配達の人が交換に来るので、車を停められる位置からの距離も関係しました。左右分離の平屋で、それぞれの世帯の側にボンベを置くと、家の両端に置き場ができます。外構の計画の中に、この2か所を先に入れておかないと、あとから植栽や物置と場所を取り合うことになりました。
オール電化にして、ガスを引かないという選び方もあります。この場合、分ける話そのものがなくなって、電気の契約だけを考えればよくなりました。給湯をどうするかとセットで決める部分です。
1契約のままにするなら、分担の決め方を先に話し合う
ここまで分ける話をしてきましたが、分けない家のほうが多かったです。
1契約のままにして、生活費としてまとめて分担する形。
この形を選ぶなら、決めておくことが2つあります。
1つは、誰の名義で契約するか。もう1つは、毎月いくらをどちらが出すかです。
定額でいくらと決めてしまうほうが、毎月の金額を見て調整するより続いていました。
光熱費は季節で変わります。
夏と冬は上がり、春と秋は下がる。実費を按分する形にすると、毎月の金額が動くので、そのたびに話が必要になりました。年間の合計を見込んで月額を決めて、年に一度だけ見直す形にしている家は、話し合いの回数が少なくて済んでいます。
この話を、建てる前にするか、住んでからするか。順番が違うだけで、同じ内容でも受け取り方が変わりました。図面を決める打ち合わせの場でなら、まだ誰も住んでいない家の話として落ち着いて決められます。住み始めてから請求書を見ながら話すと、どうしても実際の使い方の話になりました。
親からお金を出してもらうなら、名義と持分を先に話しておく
- 出した資金の割合と登記の持分がずれると贈与税の問題が生じうる
- 住宅取得等資金の非課税は令和8年12月31日までの贈与が対象
- 相続時精算課税を選ぶと暦年課税へは戻せない決まりになっている
- 共有にするか区分登記にするかで将来の手続きが変わってくる
- 税理士に相談する前に資金の出どころを一覧にしておく
ここからは、建物ではなく紙の話です。
僕は税の専門家ではないので、この章は国税庁が公開しているページに書かれている内容と、その読み方までにとどめます。実際に適用できるかどうかは、必ず税理士か所轄の税務署に確かめてください。金額が大きい部分なので、ここだけは自己判断で進めない部分でした。
それでも、何を確かめればいいのかを知っておくと、相談の質が変わります。
出した資金と登記の持分がずれると、贈与とみなされることがある
いちばん先に押さえたいのが、ここでした。
国税庁のタックスアンサーNo.4411 共働きの夫婦が住宅を買ったときには、実際の購入資金の負担割合と所有権登記の持分割合が異なっている場合には、贈与税の問題が生ずることがありますと書かれています。
ページに載っている例は、夫婦の話です。
総額3,000万円の住宅を、夫が2,000万円、妻が1,000万円で負担したのに、登記の持分を2分の1ずつにした場合。妻の持分は1,500万円相当なのに負担は1,000万円なので、差額の500万円について、夫から妻へ贈与があったことになると説明されています。
資金を出した割合と登記の持分割合をそろえておけば、この問題は生じないと書かれています。
二世帯では、この登場人物が親と子に置き換わります。
親が1,500万円を出して、子が3,500万円のローンを組んだなら、持分も3対7に近い形で登記する。この考え方をあてはめるだけで、話が整理されました。
土地を親が持っていて建物だけを子が建てる場合は、土地と建物で名義が分かれることになります。
親の家を壊して同じ場所に建てる場合は、さらに行が増えます。
解体の費用、仮住まいの家賃、2回ぶんの引っ越し代。建て替えでは、この3つが本体の見積書とは別に乗ってきました。親の家の名義と、新しく建てる家の名義が違うなら、誰がこの費用を出すのかも決めておく項目に入ります。頭金として親が出す現金と、解体費として親が出す現金では、資金計画の紙の上での置き場所が変わってくるからです。
土地の名義をどうするか、地代をどう扱うかは、また別の論点になります。このあたりは家ごとに事情が違うので、図面と資金の内訳を持って税理士に相談するのが早道でした。僕が知り合いに勧めているのは、契約書にサインする前に一度相談することです。登記の形を決めたあとだと、直すのに費用がかかります。
住宅取得等資金の非課税は、今年の12月31日までの贈与が対象
冒頭にも書いた枠を、もう一度きちんと見ておきます。
タックスアンサーNo.4508には、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により住宅取得等資金を取得した場合について書かれています。
非課税になる限度額は、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円。
受け取る側は、贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であることが条件に入っています。
所得の条件もあります。
合計所得金額が2,000万円以下、床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下と書かれていました。床面積は登記簿上で40㎡以上240㎡以下です。
ここで大事なのは、期限が今年の年末だということでした。
この枠を使うなら、贈与を受ける時期と着工や引き渡しの時期の並べ方を、設計の段階から逆算しておきます。
贈与を受けた年の翌年に申告が要ること、住み始める時期にも条件があることも書かれています。制度は改正されることがあるので、相談する時点でページの最新の内容を見てください。
相続時精算課税を選ぶと、暦年課税へは戻せない
親からまとまった資金を出してもらう場合、もうひとつの選び方があります。
相続時精算課税です。
国税庁のタックスアンサーNo.4103 相続時精算課税の選択によると、贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の直系卑属への贈与が対象と書かれています。
特別控除の限度額は2,500万円。
令和6年1月1日以後の贈与からは、これとは別に年110万円の基礎控除が適用されると書かれています。
ただし、一度選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税へ変更できないと明記されています。
この一文が、いちばん重い部分でした。
選ぶかどうかは、家を建てる話だけで決まりません。その親から将来受け取る財産の全体像、兄弟姉妹の有無、相続のときの分け方まで含めて考える話になります。だからこそ、家づくりの打ち合わせとは別に、税理士に時間を取ってもらう価値がありました。
相談するときは、家の資金計画書を持っていきます。誰がいくら出すのかが書かれた紙が1枚あるだけで、話が早く進みました。
共有にするか区分登記にするかで、将来の手続きが変わる
登記の仕方にも、二世帯ならではの選択があります。
1つの建物を、親と子の共有として登記する形。
もう1つが、構造上と利用上の独立性を満たす場合に、建物を2つの部分に分けて別々に登記する区分登記という形です。
区分登記ができる条件は、建築の作り方に関わります。
完全分離で内部の行き来を建具でふさいだ作りかどうかが、区分登記の可否に関わってきます。
どちらにするかで、将来の場面が変わりました。
片方を売る、貸す、あるいは相続する。そのときに、共有と区分登記では手続きの形が違ってきます。税の扱いも変わる部分があるので、登記の形は建てる前に決めておく項目でした。
僕が見た範囲では、平屋の二世帯で区分登記まで進める家は多くありませんでした。共有で登記して、出した資金の割合を持分に反映させる形がほとんどです。ただ、完全分離で将来片方を貸す予定がはっきりしている家では、登記の形を最初から相談していました。
税理士に相談する前に、資金の出どころを一覧にしておく
最後に、相談の準備の話をします。
持っていく紙は、1枚で足りました。
誰が、いくらを、どこから出すのか。それを行で並べた表です。
- 子世帯の自己資金と、その出どころ
- 子世帯が組む住宅ローンの金額と名義
- 親世帯が出す現金と、その原資
- 土地の所有者と、購入する場合に入れる名義
- 建物の総額と、土地代と、諸費用の内訳
この5行がそろっていると、相談が具体的になります。
資金の出どころを行で並べた紙が1枚あると、相談の時間の使い方がまるで変わりました。
金額はまだ概算で大丈夫です。
むしろ、金額が固まる前に相談したほうが、持分の決め方や贈与の時期を含めて動かせる余地がありました。契約後に相談すると、決まっている条件の中で最善を探すことになります。
僕はこの紙を作る過程で、親と初めてお金の話を正面からしました。気まずい時間でしたが、そこを通ったから、あとの打ち合わせが速かったです。建てる前に一度だけ、腹を割って数字を並べる。その1回が、あとで効いてきます。
片方の世帯が空いたあとの使い道を、図面のうちに決めておく
- 貸すなら入口と水回りが独立しているかどうかで選択肢が決まる
- 一体に戻すなら仕切りの位置と下地を建てるときに決めておく
- 仕事場や趣味の部屋として使うなら配線と回路を先に入れておく
- 売るときには登記の形と持分の状態が手続きの重さを左右する
二世帯の家には、必ず訪れる変化があります。
親世帯が使わなくなる日です。
建てる時点でこの話をするのは気が進まないものですが、図面のうちに考えておくと、そのときに選べる道が増えました。冒頭に書いた玄関でもめた家が最後に基準にしたのも、この10年後の話でした。
貸すなら、入口と水回りが独立しているかで決まる
使わなくなった部分を、誰かに貸すという選択があります。
成り立つかどうかは、作りで決まりました。
玄関が別にあって、キッチンと浴室とトイレがその内側で完結していること。この条件を満たしていれば、独立した住まいとして貸せる形になります。
完全分離で建てた家は、そのまま片方を賃貸に回せる作りになっています。
一部共用だと、難しくなります。
玄関を通らないと入れない、浴室を使うには子世帯の廊下を通る。こうした作りだと、他人に貸すのは現実的ではありませんでした。親族に使ってもらうか、子世帯が広く使うかのどちらかになります。
貸すときに実際にかかるお金や、借り手が付くかどうかの見方は、実家を貸すときの費用と準備をまとめた記事に別のサイトで書きました。人が住まなくなった家を貸す場合と、二世帯の片側を貸す場合で、準備するものはよく似ています。
建てるときに配線とメーターを分けておくと、このときの工事が軽くなります。貸す相手に請求書を分けて渡せるからでした。
一体に戻すなら、仕切りの位置と下地を先に決めておく
もうひとつの道が、2つを1つに戻す形です。
子世帯が広く使う、という選び方。
これをやりやすくするには、建てるときに仕切りの位置を決めておきます。あとで抜く可能性がある壁を、構造を支えない壁にしておく方法です。
あとで抜くかもしれない壁は、構造を支えない位置に置いてもらうと工事が軽くなります。
平屋は、この点で有利でした。
2階建てのように上の階の重さを受ける壁が少ないので、間仕切りを動かせる余地が大きくなります。屋根の形と柱の位置を先に決めておけば、内側の壁は比較的自由に配置できました。
床の高さをそろえておくことも効きます。
左右で床の段差があると、壁を抜いたときに段が残りました。同じ高さで作っておけば、抜いた瞬間に1つの空間になります。設計の担当に、将来この壁を抜く可能性があると伝えておくだけで、図面の描き方が変わりました。
仕事場や趣味の部屋にするなら、配線と回路を先に入れる
貸すのでも戻すのでもない、3つ目の道もあります。
使い道を変えることです。
在宅で仕事をする部屋、趣味の道具を置く部屋、人を招いて教室をする部屋。玄関と水回りが独立していると、家族の生活と切り離して使えました。
玄関が別にあると、仕事で人を招いても家族の生活の場を通らずに済みます。
足しておくと効くのが、電気の回路です。
機器を置く部屋にするなら、コンセントの数と回路の余裕が要ります。分電盤に空きの回路をいくつか残しておくと、あとから専用の回路を引けました。建てるときなら数千円の話が、あとからだと壁を開ける工事になります。
通信の配線も同じでした。
各部屋まで有線の口を引いておくと、使い道が変わったときに困りません。床下に予備の管を1本通しておくという方法もあって、そこに後から線を通せるようにしておいた家がありました。20年先に何が必要になるかは分からないので、通り道だけ残しておくという考え方です。
売るときは、登記の形と持分の状態が効いてくる
最後が、手放す場面です。
家を売るとき、共有名義だと共有者全員の同意が要ります。
親と子の共有なら、親が健在のうちは2人で決めることになりました。相続が起きたあとだと、持分が兄弟姉妹に分かれて、関係者が増えることがあります。
共有名義の家は、売るときに共有者全員の意思をそろえる必要が出てきます。
区分登記なら、片方だけを売ることもできる形になります。
ただ、二世帯の片側だけを買う人がどれだけいるかは、場所によりました。建物がつながっている以上、買った人は隣の世帯と壁を接して暮らすことになるからです。
売りやすさまで考えるなら、平屋の二世帯は建物より土地の条件が効きました。敷地が広く、道路付けがよければ、更地にして分けるという道も残ります。建てる時点でそこまで決める必要はありませんが、土地を選ぶときに分けられる形かどうかを見ておくと、選べる道が1本増えました。
そして、どの道を選ぶにしても、名義と持分の状態が土台になります。だから、この記事の6つ目の章に書いた紙は、建てたあともしまっておいてください。
まとめ:二世帯の平屋は、分け方を決めてから広さを配る
平屋の二世帯の費用は、坪単価の比較では見えてきません。完全同居・一部共用・完全分離のどれを選ぶかで延べ床が15坪以上ひらき、その延べ床がそのまま屋根と基礎の面積になり、さらに車の置き場が15坪前後を求めてきます。浴室と給湯器とキッチンを2つ持つかどうか、玄関を2つにして通路を2本走らせるかどうか、メーターを分けて基本料金を2つ払うかどうか。どれも、最初に引いた分け方の線から降りてくる話でした。
玄関で半年もめた家が、最後に基準にしたのは10年後の話でした。お母さんが使わなくなったとき、その部分をどうするか。そこまで並べて初めて、引き戸1枚という答えが出ています。あのとき2人が言い合っていたのは、玄関の数ではなく、これからの暮らし方をどう見ているかという話だったんだと、あとになって分かりました。金額の話が進まないときは、たいてい、その手前の話が終わっていません。
まずは両方の世帯の一日の動きを紙に書き出して、重なっている時間帯を丸で囲んでみてください。そこから先は、分け方の案が違う複数社の図面を並べていけば大丈夫です。
- 完全同居は5坪から8坪、完全分離は15坪以上の上乗せになる
- 2つにする設備は生活の時間が重なっているものだけで足りる
- 平屋は増えた延べ床がそのまま屋根と基礎の面積になる
- 車が3台になると置き場と動線で15坪前後を使う
- 浴室を2つにするなら両方を外壁側に置けるか確かめる
- 玄関を2つにする代わりに引き戸1枚で仕切る形もある
- 水道の2本目は道路の工事になるので着工前に決める
- 出した資金の割合と登記の持分をそろえておく
- 住宅取得等資金の非課税は令和8年12月31日までが対象
- 片方が空いたあとの使い道を図面の段階で考えておく
分け方の案が違う複数社の提案書を取り寄せて、家族で見比べてから決められます。
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